JAXAは12月6日に記者会見を開催し、9月に打ち上げた月探査機スリム(SLIM)について、1月20日未明に月面着陸に挑戦すると発表しました。
SLIMはJAXAが開発した月探査機(月着陸機)です。
高精度(誤差100メートル以内)での月面着陸を目指すことが最大の特徴で、また着陸地点の科学探査も実施します。さらに、2つの超小型月面探査ロボットを搭載しており、1つはJAXAを含め複数の大学が協力して開発したジャンプ型のロボット(LEV-1)、もう1つはJAXAとタカラトミーなどが中心となった球形のロボット「ソラキュー」(SORA-Q)です。
記者会見ではプロジェクトマネージャーの坂井真一郎・JAXA宇宙科学研究所教授がSLIM計画の概要と現状について述べました。また、LEV-1の開発にあたった吉光徹雄・JAXA宇宙科学研究所教授から、LEV-1の概要やその狙いなどについて解説がありました。また、JAXA宇宙探査イノベーションハブの平野大地氏より、LEV-2個とSORA-Qについての説明がありました。
この先のSLIMの予定は、以下のようになります。
- 12月25日 月周回軌道へ投入
- その後1月中旬にかけて、月を周回しながら軌道を徐々に変更。この時点では高さ600キロの円軌道に投入される。
- その後、1月中旬に再度軌道高度の変更を実施。変更後は近月点150キロ、遠月点600キロの軌道となる。
- 1月19日午後10時40分ころに、軌道高度を変更、高さ15キロの軌道を取る。
- 1月20日午前0時ころに着陸降下を開始。
- 1月20日午前0時20分ころ着陸予定。
- もし着陸不可と判断された場合、再挑戦は2月16日となる予定。
一応注意していただきたいのは、着陸行程は1月19日から20日にかけての深夜に行われるということです。時間がわかりにくいのでご注意下さい。
なお、先日この着陸日程に関し、1月19日〜20日という報道がありましたが、結果的にはちょうど1月19日と20日をまたぐ形での着陸となりますので、それが確かめられた形になります。
このようにさらっと書いておりますが、実際は非常に困難な挑戦となります。
探査機は減速開始時点で時速6,400キロメートルという高速で飛行しています。この探査機をしっかりと減速させた上で、高精度な着陸を実現させなければなりません。
いつも書いていることですが、月への着陸は簡単なことではありません。月はそれなりに重力が強い天体です。地球の6分の1の重力ではありますが、それでも小惑星などと比べれば圧倒的に強い重力です。もし制御がうまくいかなければ、月の重力に引っ張られ、探査機は月面へ激突することになるでしょう。
ここ数年でも、イスラエルのべレシート、インドのチャンドラヤーン2、日本の民間企業アイスペースのHAKUTO-R M1、ロシアのルナ25号が月面着陸に失敗し、月面に激突しています。
1月19日は金曜日ですので、金曜と土曜をまたぐ夜に着陸への挑戦が行われます。
おそらくはライブ中継などもあると思いますので、ぜひ皆さん、少し夜ふかしして、一緒に月面着陸を見届けてみてはいかがでしょうか。
- JAXAのプレスリリース
https://www.jaxa.jp/press/2023/12/20231205-1_j.html - SLIM (月探査情報ステーション)
https://moonstation.jp/challenge/lex/slim