先月打ち上げられ、現在月軌道上で試験観測を実施中のルナー・リコネサンス・オービター(LRO)が、このほど、アポロの着陸点を撮影することに成功しました。
この撮影を行ったのは、LROに搭載されているLROカメラ(LROC)で、今回の撮影により、6カ所のアポロ着陸点のうち、5カ所を撮影することができました。撮影できなかったアポロ12号着陸点についても、数週間以内に撮影を行う予定です。
今回の撮影は、7月11〜15日に行われました。LROCそのものはアポロが残した着陸機の残骸や機器などを捉えられるだけの解像度を持っています(狭角カメラで最高解像度0.5メートル)が、現在探査機は観測軌道には達していないため、それだけの高解像度はまだ出ていません。将来観測軌道に入れば、アポロ着陸点をより高い解像度で撮影することができるでしょう。

20090718-LRO_Apollo11_090718_arrow.jpg
アポロ11号着陸点。矢印の部分がアポロ着陸船下部。画像全体の幅は約282メートル。
20090718-LRO_Apollo11_090718.jpg
上記写真の拡大。下の白い線が500メートル。
20090719-LROC_Apollo15_090718_arrow.jpg
アポロ15号着陸点。矢印の部分がアポロ着陸船下部。画像の幅は約384メートル。
20090719-LROC_Apollo15_090718.jpg
上記写真の拡大。下の白い線が500メートル。
20090719-LROC_Apollo16_090718_arrow.jpg
アポロ16号着陸点。矢印の部分がアポロ着陸船下部。画像の幅は約256メートル。
20090719-LROC_Apollo16_090718.jpg
上記写真の拡大。下の白い線が500メートル。
20090719-LROC_Apollo17_090718_arrow.jpg
アポロ17号着陸点。矢印の部分がアポロ着陸船下部。画像の幅は約359メートル。
20090719-LROC_Apollo17_090718.jpg
上記写真の拡大。下の白い線が500メートル。
20090719-LROC_Apollo14_090718_arrow.jpg
アポロ14号着陸点。矢印の部分がアポロ着陸船下部。画像の幅は約538メートル。
20090719-LROC_Apollo14_090718.jpg
上記写真の拡大。下の白い線が500メートル。
20090719-LROC_Apollo14_090718_caption.jpg

上記写真の説明。”Scientific Instruments”は、アポロ宇宙飛行士が設置した科学機器(ALSEP: 後述)。”Astronaut Path”は、科学機器設置のために宇宙飛行士が着陸船との間を往復した際についた足跡。”LM Shadow”は着陸船下部(LMはLunar Moduleで、着陸船の意味)。影の手前のところに、アポロ14号の着陸船「アンタレス」(Antares)の下部が写っている。
 「LROCチームは写真の到着をいらいらしながら待っていた。写真が到着し、アポロ着陸船の下部(切り離されて月面にある着陸船)をみたときには、本当に興奮した。そして、カメラでアポロ着陸点がよく捉えられていたことがわかった。実際、写真はとてもすばらしく、まさにど真ん中といえる。」(LROの主任責任者、アリゾナ州立大学のマーク・ロビンソン氏)。
 LROが今回捉えたのは、かつてのアポロによる月探査の痕跡でしたが、LROそのものの本来の目的は未来につながっています。高精度の月探査データを地球に送信し、将来月面基地を構築するために最適な場所を探すための手がかりを得るほか、月周辺の放射線環境などを調べることが、LROの本来の目的です。
「この写真は、かつてのアポロによる偉業を示しているだけではない。月探査がいまも続いている、ということを示しているのだ。この写真は、LROが次の月への旅においてどこへ向かえばよいのか、ということを明確に示しているといえよう。」(LROのプロジェクト科学者、NASAゴダード宇宙センターのリチャード・ボンドラック氏)
LROは現在楕円軌道を飛行しているため、それぞれのアポロ着陸点を撮影した際の高度がそれぞれ異なります。そのため、それぞれの写真の解像度は異なっていますが、大体、1ピクセルあたり1メートル程度の解像度といえます。アポロ着陸船下部(descent stage)は直径4メートルほどありますので、この写真では9ピクセルほどの幅を持つことになります。しかし、今回写真を撮影した際には太陽の高さが低く、小さな起伏でも長い影を作ってしまっているため、地表から3メートル以上の高さを持っている着陸船下部については、20ピクセル程度にも及ぶ影を見ることができます。
 特に、アポロ14号を撮影した際の太陽の高度は理想的なものでした。そのため、非常に細かいところまでみることができます。アポロ月科学実験パッケージ(ALSEP: Apollo Lunar Surface Experiment Package。アポロ計画で実施される様々な科学観測のための装置をまとめたもの)までみることができます。さらに、その観測機器と着陸船との間には、宇宙飛行士の足跡とみられる跡までみることができます。
 LROはアメリカ時間で6月18日に打ち上げられ、現在、機器については初期校正、試験観測を行っています。LROCは3つのカメラから校正されており、2つの高精度狭角カメラと低解像度広角カメラからなります。本観測は8月から開始される予定で、その際には高さ50キロの軌道からの観測を行います。
※7月19日に写真、リンクを加筆しました。
・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2009/jul/HQ_09-168_LRO_Apollo.html
・NASAサイエンスニュース (英語)
  http://science.nasa.gov/headlines/y2009/17jul_lroc.htm
・NASA LROサイト (英語)
  http://www.nasa.gov/lro
・ルナー・リコネサンス・オービター/エルクロス (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/history/LRO/index.html
・セレーネ(かぐや)ならアポロ着陸船を見つけられるか?
 (月の雑学第3話 人類は月に行っていない!? – 月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/popular/story03/selene.html
・アポロ
 (月探査機 – 月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/history/apollo.html