アメリカの月探査機、ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)は、大量のデータをいまも地球に送り続けています。この大量のデータの解析に一般の市民が解析できるウェブサイトがこのほどオープンしました。
サイトの名前は「ムーン・ズー」(Moon Zoo)といい、直訳すると「月の動物園」となります。
LROの高性能なカメラ(LROC)が撮影した高解像度のデータで、このサイトを訪れた人がいろいろな解析をできるような仕掛けになっています。
この「ムーン・ズー」を企画したのはアメリカの市民科学連合(Ctizen Science Alliance)という団体です。この団体では既に天文分野で「ギャラクシー・ズー」というサイトを運営し、25万人以上の人が参加しています。市民科学連合は、研究団体や博物館などで構成されるグループです。
このグループの議長を務める、イギリス・オックスフォード大学のクリス・リントット氏は、「世界中の市民に、新しい月データの解析に参加してもらいたかった。このサイトで5分間クレーターを数えてもらえば、科学の進歩に大いなる貢献ができると共に、ひょっとしたら旧ソ連の月探査機も発見できるかも知れない。」と語っています。
このサイトで行うのは、クレーターの数を数えることです。科学者たちが興味があるのは、月のある地域がどのくらい古いか、ということです。これを知るために、その地域にどのくらい多くのクレーターがあるかを調べることが重要なのです(記事末のリンク参照)。また、クレーターは新しければ新しいほど、その輪郭がはっきりとしたものになります。このようなクレーターがどのくらいあるのかを知ることで、月、ひいては地球にこのようなクレーターを作る隕石(あるいは小惑星)がどのくらい降ってきているのかを知ることもできます。
このサイトには、NASAエームズ研究センター内にあるNASA月科学研究所(NLSI)の科学者が専門のノウハウや教育的な観点からのコンテンツを提供しています。
NLSI所長のデビッド・モリソン氏は、「科学とアウトリーチ(普及啓発)は私たちの研究所の土台だ。ムーン・ズーは科学的にも重要な発見を成し遂げるだろうし、一方で、参加型探査という新たなフィールドを切り拓くだろう。」と期待感を述べています。
・NASAエームズ宇宙センターのプレスリリース (英語)
http://www.nasa.gov/centers/ames/news/releases/2010/10-39AR.html
・ムーン・ズー (英語)
http://www.moonzoo.org/
・ギャラクシー・ズー (英語)
http://www.galaxyzoo.org/
・「かぐや」により明らかにされた真実
〜クレーター「ジョルダーノ・ブルーノ」は歴史時代にできたものか?〜 (月探査情報ステーション)
この特集の中の3ページめに、クレーターを数えてその土地の年代を知る手法「クレーター年代学」についての説明があります。
https://moonstation.jp/ja/history/Kaguya/Giordano_Bruno/
・ルナー・リコネサンス・オービター (月探査情報ステーション)
https://moonstation.jp/ja/history/LRO/