韓国が自主開発を目指しているロケットKSLV-2について、試験機の打ち上げが最低でも10ヶ月遅れることがわかりました。もともと試験打ち上げ予定が2017年12月でしたが、これがずれ込むことになります。韓国の中央日報が伝えています。

記事によると、ロケットの開発を行っている韓国航空宇宙研究院(KARI)では、エンジンと燃料・酸化剤タンクの開発が予定よりも10ヶ月遅れており、その分試験機打ち上げも遅れることになるという報告を宇宙開発振興実務委員会に行ったということです。ただ、当然のことながらこの10ヶ月というのは、スケジュールをそのまま上乗せしたものであって、実際の遅れはそれ以上になる可能性もあります。また、今後行程を精査していけば、エンジン及びタンク開発の遅れがさらに長くなる可能性も考えた方がよいでしょう。

75トン級ロケットエンジンの燃焼試験の様子(写真

75トン級ロケットエンジンの燃焼試験の様子(写真…韓国航空宇宙研究院。中央日報日本語版記事より)

KSLV-2は、韓国が自主開発を進めているロケットです。
韓国はすでにKSLV-1(羅老)を2013年に打ち上げていますが、このKSLV-1はロシアの技術を導入したもので、自主開発というわけではありませんでした。そのため、韓国が100パーセント国産の技術で開発を行っているロケットが、KSLV-2なのです。
このKSLV-2には、1段めおよび2段目のエンジンとして75トン級のエンジンを使用することになっています。このエンジンの開発は2009年から続けられています。なお、燃料は液体燃料で、ケロシンと液体酸素を使うことになっています。

さて問題は、このKSLV-2が、韓国が2020年打ち上げを目指している月探査計画に使用されるロケットであるということです。
ロケットの開発予定が遅れれば、当然のことながらこの2020年の打ち上げという予定にも大きな影響が出てくるものと思われます。また、韓国はこの2020年の月探査機(着陸機およびローバーとなる予定です)の前に、2018年に周回機を打ち上げるとしていますが、これをもしKSLV-2で打ち上げる場合にはそこにはかなり致命的な影響となる可能性があります。
従って、周回機については確実に、2020年の着陸機・ローバーの打ち上げスケジュールが影響を受けることになりそうです。

ロケットエンジンの開発は一筋縄ではいきません。アメリカの技術を導入して液体燃料ロケットエンジンを開発してきた日本も、純国産ロケットのH-IIを開発する際には、本来4〜5年を予定していた開発が大幅に遅れ、結局8年もかかっています。またそれでもエンジンの熟成は進まず、安定した打ち上げが行えるようになったのは、改良型であるH-IIAになった21世紀以降といってよいでしょう。
それだけの時間と労力(そしてH-IIの場合には事故によって人命まで失われました)をかけて開発するからこそ、しっかりとした技術が身につくものではないでしょうか。韓国には、いたずらに急いで開発を行うのではなく、月探査機に関してもロケットに関しても、確実な開発を行って確実な成功を行えるような形での開発を行って欲しいと思います。