この年末年始(12月31日と1月1日…日本時間では1月1日と2日)に月周回軌道に投入された月探査機グレイルですが、このほど、この2つの探査機に名前がつきました。「エブ」(ebb)と「フロー」(flow)だそうです。エブ(ebb)は「引き潮」、フロー(flow)は「満ち潮」という意味です。
この名前は、アメリカ全土の学校で展開された命名キャンペーンの中から選ばれたものです。今回の命名コンテストには、全米45州及びプエルトリコ、コロンビア特別区から合計で900のクラス、11000人以上の生徒が加わりました。この最優秀賞を取った命名は、モンタナ州ボーズマンという街にある、エミリー・ディッキンソン小学校の4年生のクラスでした。
このグレイルの主任科学者であるマサチューセッツ工科大学のマリア・ズーバー教授は、「この小学校のニナ・ディマウロ先生の28名の生徒さんたちは、本当にこの探査機の内容をずばりと言い当てるすばらしい名前を提案してくれた。エブとフローという名前は、この探査の核心とそれが見つけ出すであろう驚きとを表現しているものだ。」と喜びを語っています。
今回の命名キャンペーンは、ズーバー教授と共に、アメリカ初の女性宇宙飛行士でもあるサリー・ライドさんが率いる財団が行いました。インターネットや郵便で集まった候補は合計で890個。対象となったのは、全米の5〜18歳の生徒たちです。命名にあたっては、発音や綴りから、その名前が持つ独創性などまでが評価の対象となりました。ズーバー教授とサリー・ライドさんが、一緒に投稿された作文についての評価を行いました。
サリー・ライドさんは、「今回は海外からも投稿があり、どれも非常にすばらしい内容だった。今回のコンテストで、アメリカの学校の各クラスでは大きな刺激になったと思うし、科学を教えるという意味でもこの刺激は役立つのではないか。」と語っています。
今回のグレイルには、NASAとしてははじめて、完全に教育目的に使用される機器が搭載されています。これが「ムーンカム」と呼ばれるもので、第5〜8学年の生徒たちが、このカメラを使って撮影する場所を選定し、その要望はサンディエゴ(サリー・ライド財団の本拠地でもあります)にあるムーンカムの運用センターに送られます。
今回、命名の栄誉を受けたディッキンソン小学校の生徒たちは、この撮影の第1号の権利を受け取ります。既にこのディッキンソン小学校をはじめ、全米2000以上の学校が、ムーンカムによる撮影プログラムに登録しています。この計画は、サリー・ライド財団が主導し、運用についてはカリフォルニア大学サンディエゴ校の学生たちが担当します。
NASAの惑星探査部門長のジム・グリーン氏は、「今回の探査は、単に科学的にエキサイティングな成果を得るというだけではなく、未来にとってもエキサイティングな刺激を与えるものになるだろう。エブとフローは、私たちが地球にいて感じるのと同じような潮汐の力を、月で感じるのだ。」と述べています。
・NASAのプレスリリース (英語)
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2012/jan/HQ_12-019_GRAIL_Name.html
・グレイル (月探査情報ステーション)
https://moonstation.jp/ja/history/GRAIL/