月探査機グレイルは、9月10日午前9時8分52秒(日本時間午後10時8分52秒)、ケープカナベラル空軍ステーションから打ち上げられました。
打ち上げ後約1時間20分後の午前10時28分(日本時間午後11時28分)にまずグレイルAを分離。その約9分後にグレイルBを分離し、打ち上げは成功しました。
午前10時29分(日本時間午後11時29分)にはグレイルAからの信号を受信、続いて8分後にはグレイルBからの信号も無事受信しました。信号によれば、両探査機とも太陽電池パネルを無事展開し、正常な状態にあります。
グレイルAについては今年の大晦日、すなわち2011年12月31日に、グレイルBは来年の元日、すなわち2012年1月1日に月へと到着します(いずれもアメリカ東部標準時)。この2機の探査機は、対になって月の極軌道を周回し、月の重力(表側の重力)を極めて詳細に観測します。グレイルの観測により、月がどのようにできたのか、そして、月と地球がどのような過程で形成されたのか、という、科学界の長年の疑問に答えが出ることが期待されています。
月と地球は直線距離絵は大体40万キロ(平均距離では38万キロ)ありますが、グレイルは月までに400万キロもの旅をすることになります。3ヶ月半もかけてこのような長距離飛行を行うのは、この軌道が、打ち上げに際してのエネルギーを最小限にすることができるからで、いわば「節約型の」探査機だといえるでしょう。グレイルの月到着後、科学観測は約82日間にわたって実施される予定です。
NASAのチャールズ・ボールデン長官は、「フロリダの宇宙港がビジネス界に開かれていない、と思っている人は、その考えが今日のグレイルの打ち上げの轟音と共に海へと流れ去ったと思うとよい。グレイル、そしてその他の多くの挑戦的な探査は、NASAが次世代の新宇宙探査へと第一歩を踏み出した、そのよい証拠である。さらに、宇宙工業界は、このような果敢な挑戦に向けて多くの仕事、そして人材を提供しているのだ。」と語っています。
また、NASAジェット推進研究所に所属し、このグレイルのプロジェクトマネージャーを務めているデビッド・レーマン氏は、「グレイルは今や、そのバックミラーに地球を写し、その彼方の視線に月を捉えている。ミッションチームは、この3ヶ月半の飛行の間に、探査機のテスト、解析そして調整を行う準備を整えている。」と述べています。
そして、この探査の顔ともいうべき、長年天体の重力について多くの研究を行ってきた、マサチューセッツ工科大学の教授で、本探査の主任科学者でもあるマリア・ズーバー教授は、「人間がはじめて空を見上げてから、人はずっと月に魅了され続けてきた。グレイルは、月探査を新たな段階へと引き上げるもので、月の内部構造をこれまでにないほど精密に調べることを目指している。そしてそれは、月がどのようにしてできたのか、そして今のような姿に進化してきたのか、という私たちの疑問を解決していくことにつながるだろう。」と、探査への期待を述べています。
・NASAのプレスリリース
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2011/sep/HQ_11-293_GRAIL_Launch.html
・グレイル (月探査情報ステーション)
https://moonstation.jp/ja/history/GRAIL/https://moonstation.jp/ja/history/GRAIL/