NASAの月探査機グレイルが、いよいよ科学観測を開始しました。科学観測は、3月7日午後8時15分(アメリカ東部時間。日本時間では3月8日午前10時45分)からかいしされ、84日間継続される予定です。
この観測で、科学者たちは高精度な月の重力場の地図を得ることができ、月の内部構造や内部の構成物質などを、これまでにない精度で知ることができると期待されています。そしてこれらのデータは、地球、さらには地球のような岩石質の天体がどのように進化したのかを知る手がかりを与えてくれることでしょう。
グレイルは、2機の探査機「エブ」と「フロー」からなる、珍しい構成の探査機です。この科学探査期間中、この2機の探査機は電波を送受信しながらお互いの距離を極めて精密に測定します。重力が変化する場所を飛行すれば、探査機はその重力の影響を受けて距離を変えるので、その差を検知できるという仕組みです。
本探査の主任科学者である、マサチューセッツ工科大学のマリア・ズーバー教授は、「科学観測期間が開始されたことは、私たちにとってようやく一安心つける状態になった、ということだ。これでやっと、私たちがやるべきことに到達できたからだ。いよいよコーヒーポットにコーヒーをいっぱい入れて、袖をまくって仕事にかかるときだ。」と、決意のほどを述べています(余談ですが、やはり科学探査にはコーヒーは必須なのでしょう)。
グレイルの探査責任者であるNASAジェット推進研究所(JPL)のデビッド・レーマン氏は、「現在探査機は高度55キロの、極軌道に近いほぼ円の軌道を周回している。この科学観測期間では、探査機は高さ51キロから、最低では高さ16キロというところまで高度を下げることになる。探査機同士は最小で65キロまで近づいて、離れるときは最大225キロまで離れる。」と探査の概要を説明しています。
今回の科学観測は5月29日(現地時間)まで実行され、その後観測結果に基づいた月の重力場地図が作成されることになります。今回グレイルが作成する図は、これまで作成されたものより3倍も精度が向上することになります。
・NASAのプレスリリース (英語)
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2012/mar/HQ_12-070_GRAIL_Science_Begins.html
・グレイル (月探査情報ステーション)
https://moonstation.jp/ja/history/GRAIL/