月探査機グレイルに搭載されている、教育・アウトリーチ用カメラ「ムーンカム」から、生徒たちがリクエストして撮影した初の月表面の写真が届きました。アメリカ・モンタナ州ボーズマンというところにある、エミリー・ディッキンソン小学校の4年生の生徒たちが、彼らのはじめての月画像を得る、という名誉に浴しました。この生徒たち、実はこのグレイル探査機に「エブ」と「フロー」という名前を付けた生徒たちなのです。そう考えれば、はじめての月画像というのはまさに彼らにふさわしいといえるでしょう。
グレイルには、月・惑星探査史上はじめて、教育・アウトリーチ専用目的でカメラを搭載しています。「ムーンカム」というこのカメラ、正式名称は「中級学校生徒により取得された月の知見」(MoonKAM: Moon Knowledge Acquired by Middle school students)というものですが、2機のグレイル探査機の双方に搭載されています。今回、生徒グループたちからの60以上の撮像リクエストに応じて、3月15〜17日に撮影を実施、20日にそのデータが地球に送信されました。
このムーンカム・プロジェクトは、アメリカ初の女性宇宙飛行士であるサリー・ライドさんが率いる科学教育振興団体、サリーライド・サイエンスによって主導され、カメラ操作はカリフォルニア大学サンディエゴ校の大学生たちが(これも衛星の運用を学ぶという教育目的で)行います。全米52州(いわゆる50州に加え、ワシントン特別区とプエルトリコ自治区)、2700の学校が参加しています。
「単に面白いことをやっている、というふうにみえるかも知れないが、子供たちの将来にインパクトを与えるような大きな体験になるだろう。生徒たちはムーカムでの体験に本当にわくわくしており、やがてその刺激は科学技術へのわくわく感という形で残っていくはずだ」と、サリー・ライドさんは語っています。
また、このグレイルの主任科学者で、マサチューセッツ工科大学のマリア・ズーバー教授は、「ムーンカムは、「もし普通の写真が1000の言葉に匹敵するような価値があるとすれば、月軌道上からの写真は、教室全体の生徒たちに科学技術の学位を与えるくらいの価値がある」という前提に基づいている。ムーンカムを通して、私たちは次世代の科学者、技術者を鼓舞するという目的を持っている。こんなふうな幸先のよいスタートは大変うれしいことだ。」と、初画像取得の喜びを語っています。
・NASAのプレスリリース (英語)
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2012/mar/HQ_12-093_MoonKam.html
・ムーンカム画像を見ることができるウェブサイト (カリフォルニア大学サンディエゴ校: 英語)
http://images.moonkam.ucsd.edu
・ムーンカムのウェブサイト (カリフォルニア大学サンディエゴ校: 英語)
http://moonkam.ucsd.edu
・グレイル (月探査情報ステーション)
https://moonstation.jp/ja/history/GRAIL/