NASAが打ち上げた月探査機グレイルのうち、GRAIL-Bについて、10月5日に軌道修正が実施されました。これで、GRAIL-Bの月への軌道がより正確なものとなります。なお、もう1機の探査機であるGRAIL-Aについては、先月30日に軌道修正が実施されました。

グレイルのプロジェクトマネージャーであるNASAのジェット推進研究所のデビッド・レーマン氏は、両探査機の状態は良好としており、今回の軌道修正も予定通りに終了したと述べています。「まだ月軌道投入に至るまでにはかなり時間がかかるが、現在のところは全て順調に進んでいる。」(レーマン氏)

軌道変換のためのエンジン噴射は、アメリカ太平洋夏時間10月5日午前11時(日本時間6日午前3時)に実施されました。234秒にわたるエンジン噴射で、探査機の速度は秒速25.1メートル加速しました。燃料は約3.7キログラム消費しています。
GRAIL-Aの軌道変換は、9月30日午前11時(アメリカ東部太平洋夏時間。日本時間10月1日午前3時)に実施されました。こちらはエンジン噴射127秒、加速は秒速14メートル、燃料消費は1.87キログラムでした。
この軌道変換で、両探査機の到着が、ちょうど1日違いになるように、軌道が設定されます。

地球と月は直線距離では約40万キロ離れています。アポロ宇宙船が月まで到着するには約3日かかりました。一方、グレイル探査機は、その30倍も長くかかり(約3ヶ月)、飛行距離もその2.5倍(約400万キロ)にも達します。
これは、燃料を節約するための低エネルギーでの月飛行軌道を選択したためで、さらに、長い飛行時間のうちに、探査機の各機器のチェックが行えるというメリットも生み出しています。
また、探査機に搭載されている超安定振動装置という科学装置については、電源を投入してから安定した振動数での発振ができるようになるまでに時間がかかることから、月軌道に投入できるようになるまでに時間をかけて安定化させる必要があるのです。

GRAIL-Aは12月31日の夜(日本では1月1日)に月軌道に入り、翌日にはGRAIL-Bも月軌道に投入されます。科学観測期間中は、両探査機は互いに電波により交信し、両者の距離を極めて精密に測りながら飛行します。重力のわずかな違いがあれば、探査機の距離がごくわずか変化しますが、その変化を記録することで、月の重力を極めて精密に測定することができます。
グレイル計画に参加している科学者は、探査機データから極めて精密な月の重力場モデル(表側)を作成することを目指しています。それにより、月の表面、及び内部構造のより詳しい理解に繋げたいという考えです。