NASAはこのほど、年始め早々に月周回軌道に入った月探査機「グレイル」が取得したはじめての画像を公開しました。
この画像は、グレイルに搭載されている教育用のカメラシステム「ムーンカム」(MoonKAM)により撮影されたもので、約30秒ほどの長さです。今回の画像は、2機の探査機(先日の記事にもありますが、2機は満ち潮と引き潮の意味の英語「エブ」と「フロー」と名付けられました)のうち、エブに搭載されたカメラで撮影されたもので、撮影日時は1月19日です。

このビデオでは、月の上の方に映っているのは月の北極付近です。そして、ゆっくりと月の南極の方向へと飛行しています。映像に映っているのは主に月の裏側で、途中、画像の右側のところに、東の海(オリエンタル盆地)が映っているのがわかります。この盆地は月最大の衝突盆地とされ、直径は900キロ、裏側にありますが、状況がよければ、その一部が表側(私たちの目)からもみえます。
最終的にこのビデオは月の南極付近で終わっていますが、ビデオには、特徴的な星形のクレーター、ドリガルスキー(Drygalski)が映っています。このクレーターは直径が約149キロ、数十億年前の衝突でできたと考えられています。
このムーンカムは、全米の4〜8年生の生徒の教育のために使用されるシステムです。生徒たちは、ムーンカムで撮影したい場所をリクエストし、それに従って、カリフォルニア州サンディエゴにあるカメラの運用センターで撮影が行われます。生徒たちには撮影された画像が送られ、それを使って生徒たちが勉強するというわけです。
このムーンカム教育プロジェクトは、アメリカ初の女性宇宙飛行士サリー・ライドさんが率いるサリー・ライド教育財団が運営しており、カメラを運用しているのはカリフォルニア大学サンディエゴ校の学生たちです。
このように、完全に教育だけを目的とした機器を搭載している探査機は、グレイルがNASAとしてははじめてとなります。
現在、エブとフローの2機の探査機は、軌道修正を行いながら月を周回しています。最終的には高度55キロの観測軌道に到着し、月の重力などの解明のための観測を行う予定です。
サリー・ライドさんは、「既にこの計画には2500人以上の申し込みがあり、ものすごい反響に驚いている。ムーンカムを使った画像は、3月中旬以降に順次生徒たちのところに届く予定だ。生徒たちにとって、これが科学技術についての経験に大きな刺激になって欲しい。」と述べています。
ビデオでナレーションを努めているグレイルの主任科学者、マサチューセッツ工科大学のマリア・ズーバー教授は、「ビデオの品質はすばらしく、生徒たちの月探査の準備にふさわしいと思う。」と喜びと期待を語っています。
・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2012/feb/HQ_12-040_MoonKam.html
・ビデオのおおもとのページ
  http://www.nasa.gov/multimedia/videogallery/index.html?media_id=130956191
・グレイル (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/history/GRAIL/