昨日(1月1日=日本時間)に月周回軌道に投入されたグレイル1号機(グレイルA)に続き、もう1機のグレイルBも、本日無事、月周回軌道への投入に成功しました。
グレイルBの月周回軌道投入は、アメリカ太平洋時間で1月1日の午後2時43分(日本時間では1月2日午前7時43分)で、現在グレイルBは、グレイルAと同様に、1周約11時間半の楕円型の月周回軌道へと投入されています。今後数週間をかけて、2機の探査機はエンジン(ロケット)を噴射しながら軌道を徐々に修正し、最終的には高度55キロのほぼ遠景の極軌道に近い軌道へと入ることになります。
NASAのチャールズ・ボールデン長官は、「NASAは新たな年を新たな探査で祝うことになった。この2機のグレイル探査機は、私たちの月への知識、そして地球についての進化についての知識を大幅に拡げてくれることであろう。私たちは、未知へと挑み、より高い目標へと進むNASAの姿を新年から世界中の多くの人たちがみているということを肝に銘じたい。」と、軌道投入の喜びを語っています。実際、このプレスリリース自体が、12-001という番号がついているように、2012年最初のプレスリリースでもあります。
グレイルの特徴については月探査情報ステーションの該当ページや過去のブログの記事などをご参照いただくとして、ここでは、グレイルが搭載している小型のカメラについて触れましょう。このカメラ、ムーンカム(MoonKAM: Moon Knowledge Acquired by Middle school students)という名前がついています。カメラ自体の名前は「月をとるカメラ」という略号になっていますが、その略号を書き下しますと、非常に長い名前になります。そしてその中に、中学・高校の生徒、という言葉が入っていることが、このカメラの特徴を表しています。
ムーンカムは、実は教育、アウトリーチ(広報普及活動)を目的としたカメラなのです。ムーンカムは、アメリカ人としてはじめて女性での宇宙飛行を成し遂げたサリー・ライドさんが理事長を務めるサリー・ライド財団と協力して開発、運用されます。また、運用自体も、カリフォルニア大学サンディエゴ校の学生が行う、という極めて珍しい特徴を持っています。
ムーンカムは、グレイルの探査期間中、アメリカの中等学校(中学・高校)の生徒たちによる写真撮影を受け付けます。対象となるのは中等学校の5年生から8年生の生徒で、彼らが撮りたい場所をまずはリクエストします。そのリクエストは、サンディエゴにあるムーンカムの運用センターに送られ、撮影された写真は生徒たちに送られて、勉強のために使われる、という仕組みです。
また、この2機の探査機の名前についても、全米の生徒たちから募集しており、その名前の決定は2012年1月中を予定しています。選考委員長はサリー・ライドさんとマリア・ズーバー教授(グレイルの主任科学者)の2名(2人とも女性というところがポイントでもあります)です。
・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2012/jan/HQ_12-001_GRAIL_Lunar_Orbit.html
・グレイル (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/history/GRAIL/