NASAの月探査機グレイルのうち1つ(グレイルA)が、月周回軌道への投入に成功しました。
グレイルAは、アメリカ太平洋時間12月31日午後2時(日本時間では1月1日午前7時)に、軌道修正及び減速のための噴射を終了しました。午後3時(同午前8時)現在、グレイルAは近月点90キロメートル、遠月点8363キロメートル、1周回時間約11時間半の月周回軌道に投入されています。
「新年の私の目標は、月の謎を解くこと。そして、月、地球そして他の岩石質の太陽系の天体が、どのようにして進化してきたのを知ることである。グレイルAが月周回軌道に入ったことで、目標に一歩近づいた。」と語るのは、このグレイル計画の主任科学者を努める、マサチューセッツ工科大学(MIT)のマリア・ズーバー教授です。
さて、グレイルは2機構成の探査機ですので、1機が周回軌道に入っただけでは成功とはいえません。次の重要なポイントは、もう1機、グレイルBの月周回軌道投入です。こちらの方は約1日遅れで実施されます。アメリカ太平洋時間午後3時(日本時間1月1日午前8時)現在、グレイルBは月から約4万8000キロ離れたところを飛行しており、月へ向けて時速1442キロメートルで飛行しています。グレイルBの軌道投入のための噴射開始は、アメリカ太平洋時間1月1日午後2時5分(日本時間1月2日午前7時5分)に行われ、噴射は39分間にわたって継続される予定です。
グレイル計画のプロジェクトマネージャーであるジェット推進研究所(JPL)のデビット・レーマン氏は、「私たちはまだ半分家にいるようなものである。明日、ほとんどの人たちが新年のお祝いに酔いしれている中、JPLにいるグレイルのチームメンバーは重要な職務につく日となる。」と、チームの緊張感を表現しています。
2機の探査機とも月周回軌道に無事投入されますと、3月には科学観測を開始する予定となっています。探査機は2機構成で運用され、互いの距離を電波で測りながら飛行し、その距離を非常に精密に測ることで、月の重力を測定します。
このデータから、科学者は月の重力についての詳細な地図を作成します。これにより、月の地下に何があるのかを知ることができます。これは、月、地球、そして岩石質の太陽系の天体が、どのように形成されてきたのかについて、大きな手がかりを与えるものとなるでしょう。
・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2011/dec/HQ_11-427_GRAIL-A_Orbit_Insertion.html
・グレイル (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/history/GRAIL/