NASAはこのほど、月面ローバー用の資料依頼書(RFI: Request For Information)を発出しました。ただ、今回の資料依頼書はちょっとややこしいものです。 NASAが月面ローバーの開発にあたって産業界と協力するために、NASAに対して開発の参考となるような情報を寄せて欲しいという依頼なのです。つまり、NASAはローバーを開発するのは自前でも、完全に相手任せでもなく、産業界との協力のもとに行う、ということのようです。

NASAの有人探査・運用担当の副長官であるウィリアム・ガーステンマイヤー氏は、アメリカの(宇宙)産業界が、 NASAの技術に基づいてイノベーションを発揮している点に触れ、「NASAが今後有人での活動範囲を地球近傍の宇宙から火星や小惑星までの遠い範囲にまで広げるにあたり、国際宇宙ステーションに搭載された数百にわたる機器や実験装置などが未知への探求のための威力を発揮している。今回の商業的な機会によって、NASAの専門的知識が産業界の月への到達を支えることになる。」と述べています。

この「共同開発」においてNASAはどの企業とも資金交換は行わず、NASAが持つ専門的な知識・技術の提供、NASAの試験施設などの利用権の無償提供、開発や試験などにおけるNASAのハードウェア、ソフトウェアの提供などが行われます。つまり、開発の主体は企業側で、NASAはあくまで側面支援に回るというものです。もちろん、NASAが持つ膨大な知識が利用できるわけですから、企業としては有利ではあります。

このローバー開発は、NASAにとってはこれまでの知識や経験を活かすことにつながるほか、信頼性の高いローバーを低いコストで月表面へ送ることができる可能性が期待されています。このような技術開発により、サンプルリターンや月の曲地域での資源採掘、さらには地球物理学的なネットワークの構築(例えば地震計ネットワークなどの構築)が行えるようになると期待されます。

NASAが求めている能力としては、小〜中規模レベルのペイロード(貨物・機器)を搭載できるローバーで、具体的には30〜450キログラムのペイロードを月面に運ぶことが期待されています。打ち上げは早ければ2018年が予定されています。