月探査はこれまで国が行うもの、と相場が決まっていましたが、そういう時代がどうやら終わりつつあるのかも知れません。
ゴールデンスパイク(Golden Spike)というベンチャー企業が、このほど、15億ドル(日本円にして1260億円)での月旅行を2020年に達成すると発表しました。12月6日付のspace.comが報じています。
このゴールデンスパイクという会社、最高経営責任者(CEO)はアラン・スターン(Alan Stern)氏です。月・惑星探査の記事を事細かにみている人なら解ると思いますが、この方はもとNASAのミッション部門にいらした方で、冥王星探査計画「ニューホライズンズ計画」のプロジェクトマネージャーも務めていた方です。
驚くべきことに、この1260億円という価格は、2人の人間を月面着陸させ、再び地球へと帰還させるための費用だそうです。無人の月探査計画とほとんど変わらない費用で、有人探査、というか有人月飛行を実現させようとしています。
今回、スターン氏と、代表取締役でありもとNASAのジョンソン宇宙センター長であったゲリー・グリフィン氏が記者会見してこの計画を発表しました。
現時点では、どのようなロケットや乗員輸送船で月まで向かうのかは決定しておらず、2014年までには最終決定を行うとのことです。
費用を抑えるためには、すでに開発されているロケットや輸送船などを活用することが必要ですが、月面という環境に適応するためには新規開発要素も必要となります。また、スターン氏は、一部に出ていた「スペースX社のファルコン9をロケットとして使用する」という噂については否定しています。
計画の売り込み先は個人や企業、そして、独自の月探査計画、あるいは輸送船やロケットを持たない国家になるとのことです。すでにアジアやヨーロッパの国に対して働きかけを行い、良い感触を得ていると、スターン氏は述べています。
ゴールデンスパイク社が考える月飛行では、まず2機のロケットで月着陸船を地球周回軌道へと運び、その後別のロケットで人員及び貨物を輸送することとなっています。会社では、2020年台には定常運行を行いたいと考えています。
なお今のところ出資者の情報はありませんが、スターン氏にいわせれば「その必要はない。売上でしっかり会社を支える」とのことです。
また、会社の顧問として、映画「遠い空の向こうに」の原作ともなった「ロケット・ボーイズ」の作者であるホーマー・ヒッカム氏が入っています。その他にも科学者など何人かが顧問として入っているようです。
この6日は、1972年に最後の有人月探査機アポロ17号が月に向けて飛び立ってからちょうど40年(実際には打ち上げは7日)にあたります。もちろん、記者発表はその日を選んだわけです。
なお、ゴールデンスパイクとは、鉄道などが開通する際、最後に線路同士を結びつけるために枕木に打ち込むクギのことを意味しています。
・space.comの記事 (英語)
http://www.space.com/18800-golden-spike-private-moon-company.html
・ゴールデンスパイク社 (英語)
http://goldenspikecompany.com