このところ月探査関係の話題が多いですが、中国の月探査機「嫦娥5号」についての話題も入ってきました。
中国はいまちょうど、政治協商会議という大きな政治的な会議の時期で、それに合わせた国家的プロジェクトの発表が多くなっています。当然その中には、月探査なども含まれるというわけです。
この会議の席で、今年(2017年)打ち上げ予定の月探査機「嫦娥5号」が、8月にも打ち上げ場所である海南省の文昌衛星発射場に移動することになったとの発表がありました。人民網日本語版が伝えています。
さらに、打ち上げは11月末になるとのことです。

嫦娥5号は、中国がはじめて月からのサンプルリターン(試料回収)を行う探査機です。すべての工程は無人で行われ、地球の打ち上げからサンプル回収までは約1ヶ月を見込んでいます。
今回政治協商会議で発表を行ったのは、中国の月探査の総指揮を執る葉培建氏です。彼は全国協商委員の肩書も持っており、その席での発表はまさにふさわしいものであったといえるでしょう。

今回の嫦娥5号は、これまで中国が打ち上げてきた3機の月探査機に比べるとはるかに複雑なミッションになることが予想されます。そのため、早めに打ち上げ場所に移動し、しっかりと最終試験を行ったうえでの打ち上げを目指すようです。なお、嫦娥5号自体はすでにほぼすべての大型試験(重要な試験という意味でしょうか)を完了しているそうです。
海南省にある文昌衛星発射場は、中国でいちばん南に位置するロケット打ち上げ場所です。一般に、ロケットの打ち上げは南であればあるほど有利であることはご存じの方も多いでしょう。日本でも種子島に打ち上げ場があるのはそのような理由です。文昌衛星発射場は海南島のいちばん東にあり、東方向への打ち上げも有利です。
中国で最も新しいこの衛星発射場は2007年に建設許可がおり、昨年(2016年)には中国最大のロケット、長征7号の打ち上げに成功しました。基本的にこの文昌衛星発射場は、大型ロケットの打ち上げをメインに行っていくようです。今回の嫦娥5号も、中国の大型ロケット、長征5号を使用します。

今回早期に打ち上げ場所に運びこむ理由として、葉氏は衛星の複雑さを挙げています。
嫦娥5号は、サンプルを回収するという任務のため、全体が4つの構造に分かれる非常に複雑な衛星になっています。とりわけ、アポロなどもそうでしたが、月面から帰る際には上昇モジュールが月面から打ち上げられますが、その際に月面にある着陸モジュールにはロケットからの火炎が当たることになります。また、月面から離陸した上昇モジュールは軌道上で待機している軌道モジュールとドッキングして地球へと向かいますが、なにしろ38万キロも離れたところでの無人でのドッキングですから、技術的にも非常に難しいチャレンジになります。
このようなことが予想されるため、慎重を期したということがいえるでしょう。

さて、11月末に打ち上げられるとなると、タイミングとしてはあの「グーグル・ルナーXプライズ」、さらにいえばそれに参加している日本の月面ローバー「ハクト」の打ち上げ時期とわずかながら重なる可能性もあります。別にそれに合わせて打ち上げ時期を設定しているわけではないと思いますが、今年の後半は月探査がさらに盛り上がることは間違いないでしょう。