昨年10月に打ち上げられ、11月に地球帰還モジュールの期間に成功した嫦娥5号試験機ですが、月周回軌道上に残っているサービスモジュールが、嫦娥5号のミッションを想定した軌道上実証試験を実施したとのことです。中国新聞社の報道を人民網日本語版が伝えています。

記事では「位相変調試験」となっていますが、記事内容から見る限り、電波の試験ではなく、周回軌道の変更ではないかと思われます。
記事によると軌道変更は3回行われ、第1回は「位相」の変更(おそらくは周回軌道に関する何らかの要素なのではないかと思われます)と速度の調整、第2回は近月点高度の調整、第3回が記事の言葉でいうと「軌道の環状化」(おそらくは円軌道への移行でしょう)を実施したとあります。
月に限らず、天体を周回する探査機の場合、最初は燃料などの関係で楕円軌道に投入され、その後徐々に軌道を変更して円軌道に移行するという方法がよく用いられます。今回のサービスモジュールも同じようにして月周回円軌道に移行したものと思われます。

なお、記事では「上空でのドッキング試験に向けた条件が整った」とありますが、この点は非常に興味深い内容です。おそらく嫦娥5号のミッションは、打ち上げられた探査機が月周回軌道上で周回機と着陸機に分離し、着陸機は月面でサンプルリターンを実施、その後月面から離陸して再び周回軌道でドッキングするという形をとるものと思われます。
アポロ計画を覚えていらっしゃる、あるいはご存じである方であれば、有人か無人かは別として同じようなパターンであるということはおわかりかと思います。今回のサービスモジュールの試験は、この軌道上でのドッキングという、ミッション中もっとも難しい部分についての試験を実施することになると思われます。