中国は、月探査を非常に積極的に進めていますが、その姿勢は全く変わらないようです。
中国の月着陸機「嫦娥4号」が、年内に打ち上げられることが判明しました。また、その詳しい内容が少し明らかになりました。人民網日本語版などが伝えています。
全国政協委員であり、中国航天科技集団第五研究院党委書記である趙小津氏が明らかにしました。
既報通り、嫦娥4号は、史上初の月の裏側への着陸を予定しています。成功すればもちろん人類初です。
着陸場所は、月の裏側の南半球にある「南極-エイトケン盆地」とのことです。この盆地は太陽系で最大級のクレーターで、直径が約2500キロもあります。おそらく月ができた頃に巨大な天体が衝突してできたと考えられていますが、成因などはまだ謎に包まれています。
嫦娥4号はこの盆地の「どこか」に着陸することになると思われます。
ただ、月の裏側は私たちから見えない場所にあるため、そのままでは通信できません。
このため、通信を中継するための衛星が打ち上げられます。この中継衛星は上半期(今年前半)に打ち上げられる予定で、月と地球の重力が均衡する「ラグランジュ点」(L2)に向かいます。
その後、その成功を確認して、今年(2018年)下半期に嫦娥4号が打ち上げられる予定です。
また、この中継衛星には小型衛星を2機搭載し、「電波干渉実験を行い、宇宙の『暗黒時代』を観測する」(全国政協委員で、中国科学院国家宇宙科学センター研究員の呉季氏)とのことです。
これはおそらくは、電波の伝わり方などを測定して空間の歪みなどを測定するようなことではないかと思います(少し専門的になりますが、「かぐや」で行ったのと類似した、4-wayドップラー実験ではないかと思われます)。
さて、中国の月探査は(無人については)大きく3つの段階に分かれます。「周回」「着陸」「サンプルリターン」です。
そして、それぞれの段階において、探査機は2機用意されます。2機目は、1機目に何かがあったときのバックアップとしても使われますが、もし1機目も無事に成功すれば、2機目はより挑戦的なミッションに使われます。
第1段階の「周回」では、嫦娥1号がまず周回探査を行い、続く嫦娥2号は月周回だけでなく、深宇宙探査という大役も任されました。
第2段階の「着陸」では、嫦娥3号がすでに月に着陸し、ローバー「玉兔」を月面に走らせることに成功しました。ですので、嫦娥4号はより思い切ったミッションができるわけで、それが今回の「月の裏側への着陸への挑戦」となるわけです。
この点について、人民網日本語版は、嫦娥4号の性能が、嫦娥3号に比べて向上していると述べています。嫦娥3号のローバー「玉兔」は途中で不具合を起こしてしまいましたが、そのような点についても改良が施されているようです。
さて、中国の月探査は、今年中にまずサンプルリターンを行う「嫦娥5号」が打ち上げられ、その後「嫦娥4号」に進むとみられていましたが、ここのところ嫦娥5号についての情報があまり入ってきていません。ひょっとしますと、当初の順番通り、嫦娥4号がまず打ち上げられ、その後嫦娥5号が打ち上げられるという可能性があります。
また、嫦娥4号のために月に打ち上げられる「中継衛星」ですが、これは非常に注目すべきかと思われます。といいますのは、この中継衛星により、中国は月に通信インフラを確立することができるようになるからです。
単に裏側と通信するためではなく、将来的に月全体をカバーするような通信衛星網を構築することを中国が狙っている可能性もあります。
実際、同じ嫦娥4号についての中国科学院の記事では、「今後中国は第4段階の月探査に進む」と述べており、この第4段階は有人になるとみられます。そしてこの記事では、月面基地構築を2025年までに行うと述べています。
有人基地の構築のためには、基地建設に適切な場所を探すためや実際の基地構築のために無人機を事前に送り込む必要もありますし、その無人機はおそらく膨大なデータを通信することになるでしょう。今回中国が打ち上げる中継衛星が、「高速大容量」の月-地球間の通信を行うことができるインフラの端緒になるかも知れません。
月面基地を2025年までに構築、というのもかなり野心的な計画です。
アメリカが現在月上空の宇宙ステーション「深宇宙ゲートウェイ」の構築の検討を進めていますが、これが実現するのは早くても国際宇宙ステーションへの予算拠出が終わる2025年以降になると考えられます。つまり、中国はアメリカ(など)より一歩早く月面基地を構築できるかも知れないわけです。
このあたり、アメリカが狙う宇宙覇権に対し、中国が一歩先んじる姿勢をみせているのかも知れません。
いずれにせよ、まずは至近のミッションである嫦娥4号(そして嫦娥5号)が成功するのかどうかをまず見守り、それと並行して中国の将来就き探査がどのように進むのかをモニターしていくことが必要でしょう。
- 人民網日本語版の記事
http://j.people.com.cn/n3/2018/0314/c95952-9436975.html - 中国科学院の記事