史上初の月の裏側への無人着陸を目指して2018年に打ち上げられる予定の中国の月探査機「嫦娥4号」。この探査機に、海外製(つまり、中国以外の国で作られたもの)の4つの科学機器が搭載されることになりました。
人民網日本語版の記事によれば、それらはオランダ製の低周波観測装置、ドイツ製の月面中性子・放射線量探査装置、スウェーデン製の中性原子探査装置、サウジアラビア製の月小型光学イメージング探査装置4点とのことです。これらは事前に行われた機器搭載募集(一般的にはAOと呼ばれます)に応募し、審査の結果搭載が決まったものです。

記事ではこれらの装置の詳細については特に書かれておらず、また、中国で開発されるであろう搭載機器についても特に説明がありませんが、その名称からどのような機器なのかを推定してみることにしましょう。

まず、オランダ製の低周波観測装置ですが、これはどのようなものの「低周波」なのかについて特に説明はありません。おそらくは電波ではないかと思われますが、具体的にどの波長帯の電波(低周波)を使うのかは不明です。
かぐや」では電波を使って地下の様子を探る「レーダサウンダ−」という装置が搭載されていました。このとき観測に使っていた周波数は5メガヘルツとのことです。この周波数は、例えば携帯電話などに使われている「ギガヘルズ帯」の周波数に比べるとかなり低いですので、これを持って「低周波」と称しているとすれば、同様の電波による地下探査装置の可能性があります。

ドイツ製の月面中性子・放射線量探査装置ですが、これは月面の中性子を測る装置で、おそらくはルナー・リコネサンス・オービターに搭載されている「月探査中性子観測装置」(LEND)と呼ばれるものと類似した装置ではないかと思われます。
中性子は、水分子とも関係するため、月の水の存在を検知するのに有効とされています。また、「放射線量」という点については、ガンマ線などの放射線を測るというよりは、中性子の量を測ることを目的にしている(高エネルギーの中性子を測る?)のではないかと思われます。

スウェーデン製の中性原子観測装置ですが、おそらく、月のごく薄い大気における中性原子(電離していない原子)の量を測ることで、月の大気の層の性質を探るものではないかと思われます。同様の機器は火星探査機「マーズ・エクスプレス」にも搭載されています。

最後のサウジアラビア製の装置はカメラの可能性が非常に高いのですが、サウジアラビアがこれまで宇宙探査用のカメラを開発したという話は聞いたことがないため、開発実証のためのカメラではないかと思われます。サウジアラビアと中国はこの3月に宇宙開発の相互協力協定を締結しているため、その一環としてカメラ搭載が決定したのではないかと思われます。

また、搭載した機器の開発元をみますと、ヨーロッパ3カ国、中東(サウジアラビア)1カ国となっています。中国としては今後ヨーロッパとの宇宙開発協力を加速していきたいという思惑もあるのではないでしょうか。また、中東(サウジアラビア)が含まれているということは、宇宙開発への関心が高まっている中東で中国の存在感を高めたいという思惑もあるのでしょう。
特に、火星探査機の開発などで一歩進んでいるアラブ首長国連邦(UAE)、さらには火星探査機の打ち上げ受託なども含めて宇宙開発で関係を強化している日本との競争という意味も込められているかもしれません。