7月15日に打ち上げ予定だったインドの月探査機「チャンドラヤーン2」ですが、打ち上げは機器の不具合により延期されました。インド地元紙によると、延期された打ち上げの再度の日程は今月末、7月29〜30日くらいになるのではないかとのことです。
この情報を伝えているのはインドの国内紙、ヒンドゥスタン・タイムズです。
同紙によると、7月15日の打ち上げ中止は打ち上げまであと56分というところでの停止だったそうです。この中止は、インド宇宙機関(ISRO)のホームページでは「技術的な問題」(technical snag)と表現されていますが、その詳細については公表されていません。
ISROの当局者によると、現在のところ再設定される打ち上げ日がいつになるかは公表できないとのことで、現在も打ち上げ中止の原因となった「技術的な問題」の詳細についての調査が続いているとのことです。ただ、ヒンドゥスタン・タイムズ紙は、次回の打ち上げ日のチャンスとして、新月に近い7月29日または30日になるのではないかとの推測を立てています。おそらくこれは月への到達軌道の問題になると考えられますが(今回の15日という打ち上げ日も満月の少し前でした)、記事でも明確な根拠は示されていないため、あくまでも推測と捉えるべきでしょう。
なお、チャンドラヤーン2の打ち上げウィンドウは9月まで残されているとのことです。
記事によると、ISROは打ち上げ中止を「十分な予防措置として」中止したとのことです。なお、同紙にISRO関係者が語ったところによると、ロケット(から送られてくる各種)パラメーター(機器が示す数値)が一部基準に達していなかったとのことで、ISROとしてはなるべく早く打ち上げたいとのことだそうです。この「なるべく早く」は気持ちとしてはわかりますが、原因が究明されていない段階での早期打ち上げは危険ではあります。
また、別のISRO担当者は、「(打ち上げ延期は)残念なことであるが、幸いにも探査機とロケットはそのまま残っており、また後日打ち上げが可能だ」と語っています。このくらいの姿勢の方がむしろ安全といえるでしょう。
チャンドラヤーン2は、インドが打ち上げる2機目の月探査機です。前回の「チャンドラヤーン1」が周回機のみだったのに対し、今回は周回機、着陸機、ローバーの「3点セット」で臨みます。着陸場所は月の南極付近を想定しています。
着陸に成功すれば、インドは旧ソ連、アメリカ、中国に続く、4カ国目の月への軟着陸に成功した国となります。
着陸機にはローバーが内蔵されています。着陸機は、ISRO初代長官の名前を取って「ビクラム」という愛称が、ローバーにはサンスクリット語で「知恵」を意味する「プラギヤン」という愛称がそれぞれつけられています。
宇宙開発は基本的に安全第一であり、他の(政治的、あるいは個人的な)都合により振り回されるべきものではありません。まずは今回の打ち上げ延期を招いたトラブルの原因究明がなされ、その後にしっかりと打ち上げ日を設定、成功させることが重要です。
- ヒンドゥスタン・タイムズ紙の記事
月探査情報ステーションにも記事をお寄せくださっている秋山文野さんがまとめている、チャンドラヤーン2についてのわかりやすい解説記事です。
https://news.yahoo.co.jp/byline/akiyamaayano/20190614-00130033/