インドの新聞The Hinduが伝えるところによりますと、既報の通り、衛星機能に重大な故障が発生したインドの月探査衛星、チャンドラヤーン1について、インド宇宙機関(ISRO)が、来年1月までに探査を終了させる可能性について検討しているとのことです。
 この記事はISRO高官の話として伝えられています。
 故障したのは、姿勢を保つため、一定の星を観測するスターセンサーと呼ばれる装置で、衛星の安定を保つためには欠かせない装置です。このスターセンサーが故障している関係で、現在チャンドラヤーン1の姿勢安定は、内蔵のジャイロスコープだけで行われている状態です。
 この状況のため、ISROとしては、探査を予定(2年間。2009年1月探査開始なので、2011年1月まで)の半分の1年とし、早めに探査を切り上げる代わり、それまでにできる限りのデータを集める方針を固めた模様です。この9月に、探査機に機器を提供しているアメリカ(NASA)、ヨーロッパ(ESA)、ブルガリアの各宇宙機関の関係者を集めた会議を持ち、そこで検討が行われる予定です。
 ISROのナイール・アドバン議長の話では、チャンドラヤーン1衛星の状態は(スターセンサーを除いて)問題はなく、2年間の探査もジャイロ安定の状態だけで行えるとのことですが、他の高官は、ほかの機器などの故障の可能性に備え、予防的措置としての短縮を考えているとのことです。
 ジャイロスコープだけで姿勢安定を行っているため、毎週衛星の姿勢安定のためのスラスタ噴射が必要となっており、高官によると、「もし2つのジャイロスコープのうち1つが壊れるようなことがあれば、予備のもう1つに切り替えることになるが、姿勢制御の精度が著しく落ちることになる。」ということです。
「ほとんどの科学機器には問題がないのだが、ISROとしては、満足できる成果が得られるかどうかを見極めたいと考えている。」とのことです。
なお、機器が順調に動いている証拠として、アメリカ(NASA、ブラウン大学など)が開発し、チャンドラヤーン1に搭載されている月鉱物マッパー(Moon Mineralogy Mapper, M3)が、地球を捉えた写真が公開されています。
・End of the orbit for Chandrayaan-1 by January 2010? (The Hindu, 英語)
  http://www.hindu.com/2009/08/06/stories/2009080661391200.htm
・Moon Mineralogy Mapper (M3) (JPL、英語)
  http://moonmineralogymapper.jpl.nasa.gov/
※この「NEWS」のリンクに、月からみた地球の絵の画像があります。
・チャンドラヤーン1 (月探査情報ステーション)
  http://moon.jaxa.jp/ja/history/Chandrayaan-1/