世界的に広がる新型コロナウイルスの影響は宇宙開発も例外ではありません。NASAは19日に声明を発表し、現在進めているスペース・ローンチ・システム(SLS)及びオライオン(オリオン)宇宙船の試験及び開発を一時停止すると発表しました。もちろん、新型コロナウイルスの感染の拡大を受けての措置です。

熱試験前のオライオン(オリオン)宇宙船

NASAのグレン宇宙センターで、熱試験前にヨーロッパ機械船(European Service Module)と結合され、治具に組み込まれるオライオン宇宙船。2019年12月4日公開。
Photo: NASA / Marvin Smith, Alcyon Technical Services

NASAのブランデンスタイン長官名で出された声明によりますと、昨年末から進められてきたオライオン(オリオン)宇宙船、及びそれを打ち上げるロケットであるスペース・ローンチ・システム(SLS)の試験及び開発を一時的に停止するとのことです。一時的に試験設備などを安全な形で退避させた上で、必要なインフラ維持や生命に関わるような作業を行うごく一部の人員を除いて立入禁止の措置を取るとのことです。

2024年までに有人月飛行を行うというアルテミス計画では、月面への宇宙飛行士の輸送にオライオン宇宙船を使用し、打ち上げにはSLSのロケットを使用します。第1回の打ち上げ(アルテミス1)は今年、もう少しいえば今年末が予定されており、オライオン宇宙船の試験やSLSの組み立てが進められていましたが、この作業も当面中止されることになります。

なお、この声明では、新型コロナウイルスへの感染者が発生した(及び周辺地域で多くの感染者が出ている)NASAのステニス宇宙センター(ミシシッピ州、但しルイジアナ州との州境に位置する)、また同じく周辺で感染者が多く発生しているミーシュー組立施設(ルイジアナ州)について当面の間施設閉鎖を実施し、両施設に勤務するNASA職員は全員がテレワークで仕事をするとしています。また、出張も禁じられます。

声明では、「(こういった措置は)NASAのミッションに影響を及ぼすが、全体像の把握と危険の軽減に際し、NASA全従業員にとっての最優先は安全と健康であると理解している。」と述べ、この措置の重要性を強調しています。

もともと、あと4年で宇宙船とロケットの試験を終えて有人月飛行を行うという計画はスケジュールとしてもギリギリのものですが、今回の新型コロナウイルス感染の拡大で、このスケジュールにも遅れが生じることが懸念されます。しかし、ウイルスからの安全もそうですし、計画そのものの安全、さらにいえば将来飛行することになる宇宙飛行士の安全も重要です。将来的にこの遅れを無理に取り戻そうとすることなく、安全第一で計画が進行することを望みます。