いままで調印していなかったのが不思議ではあるのですが、このほど、インドがアルテミス協定に調印しました。これで、アルテミス協定に調印した国は合計27カ国となります。24日、NASAが発表しました。
インドのアルテミス協定への調印式は、21日にワシントンのウィラード・インターコンチネンタルホテルにて行われました。NASAのビル・ネルソン長官も臨席し、駐米インド大使のタランジット・サンドゥ氏が署名し、協定は調印されました。
ビル・ネルソン長官は、「NASA、そしてバイデン大統領とハリス副大統領を代表し、ここ地球で、そして宇宙でインドとのパートナーシップを広げることができることを大変うれしく思う。私たちが宇宙の深淵へと足を踏み入れるとき、私たちがどのようにそこへ行くかは、私たちがそこで何を行うかと同じくらい重要である。私たちはそこへ、平和のもとに到着したい。私たちはそこへ、透明性の高い方法で到着したい。そして困ったときにはお互いに助け合いたい。私はアルテミス協定に署名したインドのリーダーシップに非常に感謝しており、私たちが一緒に達成するすべてのことを非常に楽しみに思っている。」と、署名への歓迎の意を述べました。
また、タランジット・サンドゥ駐米インド大使は、「インドはアルテミス協定の締約国となるための画期的な一歩を踏み出しており、これは私たちの二国間協力における重要な機会となる。私たちはここで、新たなレベルの協力と進歩に支えられた、宇宙探査へのインドのコミットメントを改めて表明する。インドは責任ある宇宙大国であり、宇宙空間の平和的、かつ持続可能な利用を最重要視している。私たちは、アルテミス協定が、ルールに基づく深宇宙へのアプローチを前進させると確信している。またそれは、探査とは単なる知識の追求--未知なるものを知ること--ではなく、人類をより高みへと進めるための触媒の役割を果たす、という集合的な信念を表している。その意味で、これらの協定に署名することは、パートナーシップを、世界的なよきもののためへと進化させるものとなる。」と、この協定に調印した意義をインドだけでなく、世界的なパートナーシップの観点から述べています。
アルテミス協定(アルテミス合意)は、NASAが主導する有人月探査計画「アルテミス計画」において、その参加国が遵守する内容をまとめたガイドラインです。例えば平和目的での活動の実施、透明性の確保、相互援助、宇宙遺産(これまでの探査において残された人工物)の保護、宇宙資源採掘の実施においての制限などです。これまでに日本を含めた26カ国が署名しています。
日本は2020年に、オーストラリアやアラブ首長国連邦(UAE)などと共に、署名した最初の8カ国(アメリカを含む)の一つとなっています。
今回のインドの署名は、アジア太平洋地域で存在感を強めるインドをアメリカ「陣営」の宇宙開発に大きく引き寄せることになるでしょう。外交面でもクアッド(日本・インド・アメリカ・オーストラリア4カ国による外交・防衛の連合。正式名称は「日米豪印戦略対話」)の一員として、アメリカにとっても日本にとっても重要なパートナーとなっています。
また、宇宙開発分野においてはご存知の通り、世界でも屈指のロケット・人工衛星打ち上げ実績を持っています。アジア初の火星探査機の火星周回軌道投入など、一部分野では日本をも上回る実績を持っています。
月探査の分野でも、チャンドラヤーン1におけるアメリカ開発機器の搭載(M3: 月鉱物マッパー)とそれによる月の水の発見、2024年に予定されている日本・インド共同の月探査(ルペックス: LUPEX)など、重要な役割を果たしています。このアルテミス合意調印によって、アルテミス計画、さらには世界の有人月探査の中でのインドの存在がますます大きくなっていくことでしょう。
- NASAのプレスリリース