アポロ11号の船長であったニール・アームストロング氏の死去に関し、各界から寄せられている声明をまとめました。

ニール・アームストロング宇宙飛行士

アポロ11号のミッション当時のニール・アームストロング宇宙飛行士
(Photo: NASA)

アームストロング氏の家族より
ニール・アームストロングが、心臓手術に伴う合併症により死去したことを、大変悲しく思います。
ニールは愛すべき夫であり、父であり、祖父であり、兄弟、そして友人でありました。
ニールは、常に自分を、ただ単にやるべきことを成し遂げただけの人物と考え、英雄ととられることを嫌っておりました。彼は、海軍の戦闘機パイロット、テストパイロット、そして宇宙飛行士として国家(アメリカ)に貢献できたことを誇りに思っておりました。また、学問という意味で、また実業界への貢献という意味で、生地オハイオ州に戻れたこと、そしてシンシナティにおいてコミュニティのリーダーになれたことを申し述べたいと思います。
彼は生涯常に、空を飛びつつけること、そして探検し続けることを愛しておりました。それは、彼の少年時代からの夢であり、それを追い続けた一生であったと思っております。
ニールが常に自分自身のプライバシーを尊重する人であったことは確かですが、それと同じくらい、世界中の人たちから寄せられた善意を大切にする人でありました。
このような素晴らしい人物を失ってしまったことに対し心から哀悼の意を捧げ、また、彼の素晴らしい一生に対して心からの賞賛の気持ちを表したいと思います。また、この彼の生き方が、限界を超え、新たな世界を切り開き、そして自分を無にしてより大きな目標を実現するため一生懸命頑張っている、若い人達のお手本になることを希望しています。
ニールに対し、少しでも敬意を表したいという皆様にお願いがあります。彼が行なってきた仕事、業績、そして生活の面で見せた慎み深さを偲ぶために、もし皆さんが今度月を見上げる機会がありましたら、彼のことを思い、そして彼にウィンクをして下さい。

オバマ大統領より
私と妻ミシェルは、ニール・アームストロング氏が逝去されたというニュースを聞き、深い悲しみを覚えている。
ニールは、アメリカの英雄たちの中でも、彼の時代だけではなく、すべての時代において語り継がれる人間である。彼とその仲間たちがアポロ11号に搭乗し、月へと向かったときには、彼らは国全体の意思も共に月へと運んでいった。彼らは、アメリカ人の精神は、想像すらできないことを越えて進むものだ、ということを世界に示したのである。それはすなわち、意欲と創造性があれば、どのようなことも可能なのだということである。そして、ニールが月面に第一歩を記したとき、彼は人類が成し遂げた偉業を永遠に記憶に留めるモニュメントを月面へと運んだのである。
今日ここに、ニールが残した発見の精神は、道なる世界を探求するすべての人々の胸に刻まれることであろう。そして、更に高く、さらに未知なるところへ進みたいと願う人たちにも。伝説は語り継がれる。…小さな一歩が偉大なる力を持つことを教えてくれた、一人の男の力に照らされて。

NASA・ボールデン長官より
私はここに、NASA全職員を代表して、ニール・アームストロング氏のキャロル夫人、そしてすべてのご家族の皆様に、深い哀悼の意を表する。歴史書というものがこの世にあり続ける限り、ニールアームストロングの名はその中に書かれ続け、私たちの世界を超え、人類としてはじめて月に降り立った者として記憶され続けることであろう。
アメリカの偉大なる探検者の一員であるというだけではなく、ニールは彼自身常に品位と人間性を兼ね備えた人物であり、私たちすべての手本であった。ケネディ大統領が人類を月に送ると宣言したとき、ニールは何のためらいもなく、それを引き受けたのである。
宇宙探査が次の時代に入ろうとしているいま、私たちはまた、ニール・アームストロングの肩に乗ることになる。彼を越えて先へ進むのだ。偉大な友人、宇宙飛行士仲間、そして心の意味でのアメリカの英雄を失ったことをここに追悼したい。

ESA・ドルダン長官
今日は、ニール・アームストロング氏の家族だけではなく、世界すべてにとっても悲しい日である。ニール・アームストロング氏、そしてバズ・オルドリン氏が記した月への第一歩は、人類の歴史の一部であり、宇宙開発の歴史、あるいはアメリカの歴史、という点を越えて、大きな意義を残したものといってよい。
1969年7月21日までは、ニール・アームストロング氏はアメリカ人であり、月面着陸はアメリカが成し遂げたものであった。しかしこの日以降は、ニール・アームストロング氏は人類全体のものであり、それは私たちの地球を「発見」したユーリ・ガガーリンと同様である。
この日以来、2つの超大国(アメリカと旧ソ連)が争ってきた宇宙での競争は協調へと変わり、いまやアメリカ人とロシア人は、日本人、カナダ人、そしてヨーロッパの同僚たちと共に宇宙に滞在している。そして私はいつか(そうなるように働いているが)、ここに他の国々の人たちも入って欲しい。
月着陸はアメリカの人々による努力の集大成であり、またニール・アームストロング氏はこの優れた努力のシンボルでもあった。しかし、彼は物静かで控えめ、そして強い自制心をもって、ヒーローという立場を超えていった。そして、彼の経験を、次世代のために役立てたのである。
彼は世界中のあらゆる世代を刺激した。それだからこそ、ニール・アームストロングという人の魂は、多くの技術者や科学者の中に生き続け、世代から世代へと受け継がれていくのである。
ニール・アームストロング氏と私がお会いした時のことは、まるで不思議な時間のようだったことを覚えている。そして、私は彼の家族が望む「月へのウィンク」を行いたい。そこには、彼の足跡が永遠に刻まれているのだから。

  • アームストロング氏家族の声明 (NASA)  
[英語] http://www.nasa.gov/home/hqnews/2012/aug/HQ_12_600_armstrong_family.html
  • オバマ大統領の声明全文 (ホワイトハウス)  [英語] http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2012/08/25/statement-president-passing-neil-armstrong
  • ボールデン長官の声明全文 (NASA) [英語] http://www.nasa.gov/home/hqnews/2012/aug/HQ_12-601_Bolden_Statement.html
  • ジャック・ドルダンESA長官の声明 (ESA) [英語及びフランス語] http://www.esa.int/esaCP/SEMGV84Y96H_index_0.html
  • アポロ計画 (月探査情報ステーション)
    https://moonstation.jp/ja/history/Apollo/