小惑星探査機「はやぶさ2」に搭載されている装置「スタートラッカー」(どのようなものなのかは後述)が、目的地である小惑星リュウグウの姿を捉えました。まだはっきりと形がみえるほどの大きさではないですが、点よりは少し大きい大きさになっています。

「はやぶさ2」スタートラッカーが撮影したリュウグウ(注釈付き)

「はやぶさ2」搭載のスタートラッカーが撮影したリュウグウ(注釈をつけたもの)。
3枚の写真を合成した画像。撮影日時は、5月12日1時ころ、5月13日2時ころ、5月14日1時ころ。
写真中央部、黄色で示された天体がリュウグウ。何回か撮影された画像を重ねているため、画像では動いているようにみえる。水色で示された天体は恒星で、「Psc」とはおうし座の符号。
(© JAXA/京都大学/日本スペースガード協会/ソウル大学)

「はやぶさ2」スタートラッカーがとらえたリュウグウ(アニメーション)

「はやぶさ2」搭載のスタートラッカーが捉えたリュウグウの画像を3枚重ねてアニメーションとして表示したもの。図の中央を右下から左上へと動く天体がリュウグウ。背景の恒星は静止しているとみなせるため画像では動いてない。画像にチラチラと現れる他の白い点はノイズ。
(© JAXA/京都大学/日本スペースガード協会/ソウル大学)

スタートラッカーとは、月・惑星探査機などに一般的に搭載されている装置で、平たくいえば「カメラ」です。
宇宙空間で探査機が自分の位置を知るためには、あらかじめ場所がわかっている恒星をいくつか撮影していくという手法を取ります。そのための、恒星を撮ることに特化したカメラがスタートラッカーです。
カメラですから普通に小惑星を撮影することもできる、というわけで、今回はそのような撮影にチャレンジしました。

「はやぶさ2」からみて、目的地リュウグウは(宇宙的な距離の感覚からすれば)すぐ近くにあります。一方、背後にある恒星は(同じく宇宙的な距離の感覚からすれば)はるか遠くにあります。
私たちが例えば大きなスタジアムの席に座っているとして、すぐ手前を横切る人は大きく動きますが、はるか遠くを移動している人はほとんど動きがみえません。そこで、時間をおいて何枚か写真を撮れば、すぐ近くを動いている人の位置は変わりますが、遠くの人の位置はほぼ変わらないことになります。
今回もこのような方法を使いました。「すぐ近くにいる人」をリュウグウ、「遠くにいる人」を恒星と考えれば、恒星は何枚写真をとってもほぼ動かない一方で、リュウグウは確実に動いていきます。今回は3枚の写真を撮って重ねることで、画像のど真ん中に、確かに移動しているリュウグウを捉えることができています。
このような方法は、未知の小惑星を捉える観測でも使われています。

よくみるとリュウグウの形はもはや1つの点ではなく、2〜3ピクセル程度ではあるにしても大きさを持っていることがわかります。
すでに現時点(5月19日)で、「はやぶさ2」とリュウグウとの距離は4万キロ程度となっています。
私たちが天気予報などで見る雲のデータを撮影している気象衛星や、衛星放送を中継する放送衛星などがある軌道は静止軌道といい、地球表面から約3万6000キロメートルの高さにあります。
「はやぶさ2」はもう、目的地まで本当にそのくらい、手前まで近づいたことになります。

「はやぶさ2」が小惑星に到着するのは、6月22日〜7月5日とされています。もうあと1ヶ月ちょっと。いつ到着するか、そしてそのときにみえるリュウグウの形がどのようなものか、今から楽しみです。