「はやぶさ2」プロジェクトチームは11日、探査を行う小惑星「リュウグウ」の形状モデルの初期バージョンが完成したと発表しました。
形状モデルは、元になっている形状生成ソフトウェアの開発元によって2種類があります。会津大学(筆者が所属する大学)のバージョンと、神戸大学のバージョンです。

リュウグウ形状初期モデル(会津大)

会津大学が開発したソフトウェアに基づくリュウグウの形状モデル(初期)。
© JAXA、神戸大、会津大、(アニメーション処理)Auburn University

 

リュウグウ形状初期モデル(神戸大)

神戸大学が開発したソフトウェアに基づくリュウグウの形状モデル(初期)。
© JAXA、神戸大、会津大、(アニメーション処理)Auburn University

このモデルは、リュウグウ到着までに得られた光学航法カメラ(ONC-T)のデータを元に、それぞれの大学が開発した形状モデル生成用ソフトウェアで処理したものです。さらに、上に示したアニメーションは、そのモデルをわかりやすいようにアニメーションとして(自転させて)表示させています。

小惑星の形状モデルは、探査を行う上で欠かせない「地図」のようなものです。
「はやぶさ2」が狙う小惑星リュウグウは、私たちが一般的に知るような天体とは違い、球形ではありません。不規則な形をしています。したがって、一般的な地図とは違って、こういった形状モデルを作ることで、天体全体の様子を捉えることが可能となります。
また、「はやぶさ2」の最大の目的は、天体へ着陸することです。そのためには行きあたりばったりでチャレンジするというわけにはいきません。あらかじめ着陸に向けたシミュレーションを行って、目指す場所に降りたらどのようなことが起きるかを見通しておくことが必要です。形状モデルはこのような場合にも大いに役立ちます。

形状モデルは「モデル」であって、実体ではありません。モデルはあくまでコンピューターの中に存在するものですし、データから生成されるものですから、ソフトウェアの考え方(アルゴリズム)の違いによってモデルは変わってきます。今回の会津大学と神戸大学の2つのモデルももちろん細部に違いは存在します。しかし、2つのモデルで検討をしておけば、実際のリュウグウの形と大きく異なる、ということはおそらく避けられるでしょう。

なお、会津大学の手法はSfM(Structure-from-Motion)と呼ばれるステレオ視の一種を用いており、神戸大学の手法は初代「はやぶさ」でも用いられたSPC(Stereophotoclinometry)という手法を用いています。
SfMは多視点の画像から立体モデル(あるいはカメラ位置)を生成(判定)する手法で、2次元の画像から3次元構造を生成する方法として近年よく用いられるようになっています。SPCは画像に写った対象物(この場合はリュウグウ)の光の当り具合を利用し、複数の画像から立体的な形状を推定する手法です。

今後データの数が増えると共にデータの精度が向上すれば、より精度の高いモデルが生成できると期待されます。着陸点の選定や科学観測計画の立案など、「はやぶさ2」に欠かせない運用計画の策定などに、これらのモデルは大いに役立つことでしょう。