打ち上げから間もなく5ヶ月。それでなくても宇宙ファンとしては気になる「はやぶさ2」の動向ですが、JAXAは比較的定期的に記者会見を行って、状況を伝えてくれています。
4月27日、JAXAは第1回のイオンエンジン連続運転後の状況についての記者会見を開きました。初代と同様、「はやぶさ2」も小惑星までの航行にはイオンエンジンを使用しますが、問題はこのエンジンがどれだけ安定して連続運転できるかです。イオンエンジンは長く運転できればできるほど推進力を生み出す仕組みになっていますし、やはり最初のうちはいろいろなトラブルが出がちですので、こういった初期の状況をしっかりとみていくことが大切です。

今回の記者会見には、この4月からプロジェクトマネージャーとなった、JAXA宇宙科学研究所の津田雄一氏と、その前のプロジェクトマネージャーで、イオンエンジンの開発担当でもある同じくJAXA宇宙科学研究所の國中均教授が出席しました。いわば記者会見も「新旧交代」の場といえる状況でした。
また、テレビ参加という形になりましたが、前サブプロジェクトマネージャーの稲葉典康氏、ミッションマネージャーの吉川真・JAXA宇宙科学研究所准教授も加わりました。

「はやぶさ2」は、3月2日に初期機能確認を終了し、翌3日より、いよいよ小惑星への巡航フェーズに入りました。この3日から21日まで、4つあるイオンエンジンのうち2つ(AとD)を利用し、連続運転を実施しました。
この運転後の「はやぶさ2」の軌道を評価した結果、計画した通りの軌道に探査機が乗っていることを確認できました。現時点で地球からの距離は約5275万キロメートル、飛行速度は秒速27.68キロメートル、総飛行距離はすでに3億5166万キロ(地球と太陽とを往復した距離…約3億キロを上回る)となっています。

今後、6月上旬には第2回のイオンエンジン連続運転、8〜9月にはイオンエンジンを利用した軌道の微調整、10月初旬以降には化学推進エンジンを利用した精密誘導を実施します。そして、今年12月3日に、地球のそばを通り抜けて加速する「地球スイングバイ」が実施されます。

また、先のブログの記事でも書きましたが、「はやぶさ2」は日本の追跡アンテナだけではなく、海外の追跡アンテナも利用します。その通信テストの一環として、4月22日と24日に、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の追跡局との通信を実施しました。
なお、「はやぶさ2」の追跡管制は、日本(JAXA)の臼田局(長野県佐久市)、内之浦局(鹿児島県肝付町)に加え、NASAが持つ深宇宙追跡網(DSN)のアンテナ(アメリカ・カリフォルニア州ゴールドストーン、スペイン・マドリッド、オーストラリア・キャンベラ)と、今回のESAの追跡網(アルゼンチン・マラグルエおよびドイツ・ダルムシュタット)を利用します。

今回の記者会見でもプロジェクトマネージャーの交代について質問がありましたが、津田さんは「気を引き締めていく」と、先の長い運用に向けて自らを戒めるように語っていました。
また、「なぜこの時期にプロジェクトマネージャーを交代したのか」という記者からの質問に対しては、國仲教授は、『私自身は本来は技術畑の人間で、「はやぶさ2」を2014年12月というきっかりとしたタイミングで打ち上げるために、多くの人の支援を得てやってきた。ただ、運用や衛星の組み立ては、技術畑の人間にとってはそれまでの技術を吐き出す場であった。未来に向けての技術開発には注力できていなかったので、もう一度技術研究開発に戻り、これからJAXAが世界に訴える魅力のあるミッションを作り上げるために力を尽くしていきたい。』と述べています。

12月3日のスイングバイに加え、12月7日には「あかつき」の金星周回軌道再投入が待っています。昨年に続き、今年も探査が熱い12月がやってきそうです。

※記事作成にあたっては今村勇輔様のご協力をいただきました。ありがとうございました。