大がかりな探査というものは、一つの国だけではなかなか完全にはできないものです。とりわけ、探査機を24時間追いかける追跡管制の分野では、国際協力は不可欠です。「はやぶさ」のときにも、アメリカ・NASAの深宇宙追跡網(DSN)が活躍したことはご存じでしょうか。実は今回の「はやぶさ2」では、アメリカに加え、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の追跡管制網も協力しています。このことについて、ESAがこのほどウェブ記事を公開しました。
ESAがJAXAの衛星の追跡管制を支援したのはこれがはじめてではなく、過去には「きらり」(OICETS)や赤外線天文衛星の「あかり」(ASTRO-F)でも支援を実施しました。しかし、月・惑星探査での管制支援ははじめてです。
小惑星探査などを行っているときには、できる限り長い時間…理想的には24時間いつでも通信できる必要があるのですが、地球は自転しているため、探査機と通信できるアンテナは常に変わってしまいます。長野県佐久市(臼田)にあるJAXAのアンテナだけでは、ずっと「はやぶさ2」と交信をし続けるわけにはいきません。そこで活躍するのが、ESAがアルゼンチンに持っているアンテナです。
ESAの追跡管制アンテナは、スペインとオーストラリアにもありますが、今回活躍するのは、アルゼンチン中西部、チリとの国境に近いマラグルエというところにある直径35メートルのアンテナです。この場所、よく考えてみるとちょうど日本からみて地球の裏側にあたります。臼田から探査機が見えなくても、今度は裏側のアンテナがフォローする、というわけです。
マラグルエで受信されたデータは、ドイツ・ダルムシュタットにあるESAのヨーロッパ宇宙管制センター(ESOC)に送られ、ここからJAXAに伝えられます。
ESAの「はやぶさ2」管制担当のマイテ・アルザさんは、「日本の深宇宙ミッションの完成支援は初めてのことなので、「はやぶさ2」のJAXAの運用システムとESAの地上局との間の通信をしっかりと確立させるため、これまで何ヶ月にもわたってJAXAとは緊密に連携しながら仕事をしている。」と述べています。
この4月22日にも、マラグルエのアンテナから「はやぶさ2」を結んでの通信試験が行われ、無事成功しました。
「はやぶさ2」のミッションの背後には、世界レベルでの協力関係がある…このことも、ぜひ覚えておくと、ミッションがより楽しめるかと思います。
- ESAの記事