現在、小惑星ベスタの探査を行っているドーンですが、いわば「ロスタイム」として、約40日ほどの探査延長が決定しました。今回の探査延長により、ドーンがベスタを離脱する日は8月26日となり、一方、次の目的地である準惑星ケレスへ到着する日程はこれまで通り、2015年2月で変わりありません。
今回の探査期間延長では特に追加支出が発生するということもなく、探査機の推進システム(電気推進システム)をより柔軟に扱うことができたことが今回の延長探査の余裕を生むきっかけになっています。
現在、ドーンはベスタを周回する低軌道(高さ210キロ)での探査を行っていますが、この高度での探査を少なくとも5月1日まで継続することになりそうです。低高度での探査が延長されることで、ドーンに搭載されているガンマ線・中性子検出器のデータの質の向上が図られ、ベスタ表面の物質についての非常に精密な地図が作成されることが期待されます。また、重力データの向上も行うことができるでしょう。カメラやスペクトロメーターについても、より詳細なデータを得ることができます。
また、探査期間が延長されたことで、第2期の高々度でのマッピングがこの夏の後半に行われる予定です。ドーンがベスタに到着した昨年(2011年)夏には、ベスタの北半球の大半が影で覆われていました。この延長探査ではその部分に日が当たっているため、新たな探査データが得られる可能性があります。
ドーンの主任探査責任者であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のクリストファー・ラッセル氏は、「若干滞在期間が長くなったことで、ベスタのすばらしい眺めをより長めに楽しめるようになった。ベスタを周回できるという千載一遇の機会を活かし、この間に最良、そしてもっとも詳細なデータを得ることを目指したい。」と述べています。