昨年から小惑星ベスタの探査を続けている探査機ドーンについて、その最新の探査結果がこのほどNASAから発表されました。ベスタの表面がこれまで考えられていたより変化に富んでいることや、温度変化が急激であることなど、内部構造についての手がかりになるような結果も得られています。今回の最新探査結果は、現在オーストリアのウィーンで開催されているヨーロッパ地球物理学連合大会で発表されており、この結果が、ベスタをはじめとする小惑星の形成や進化を理解するために役立つものと期待されています。
ドーンの探査では、上空680キロ、及び210キロからベスタ表面の写真を撮影していますが、この写真から、ベスタ表面がバラエティに富む鉱物や岩石の分布をしていることがわかってきました。スペクトルごとの写真を特殊な方法で重ね合わせた画像を作成することにより、特定の鉱物が多く集まる場所などがわかり、一度溶けたとされているベスタ表面の物質についてのよりよい理解につながります。
また、隕石などの衝突の破片が集まってできた角れき岩と呼ばれる岩石についての研究結果もまとまってきています。ドーンでわかっているこれらの岩石は、鉄やマグネシウムに富む鉱物が多く、地球の火山岩などでみられる岩石とよく似ています。また、上空から撮影された画像からは、まるで池のような形をした堆積物も発見されており、これはおそらく、衝突によって発生した細かい破片が、低い場所に集まって形成されたものではないかと考えられます。
ベスタの北極近くにあるタルペア・クレーターでは、クレーターの壁のところに、きれいに層をなしているスペクトルの違いがみえています。これはおそらく、その物質(おそらくは溶岩)の成分の違いを反映しているものと思われます。
表面に近い層には、ベスタに衝突した物質そのものが混じっています。層は下に行くほどより本来の物質に近いものとなります。また、こういう崖のようなところは頻繁に崩れるため、こういった物質が露出する可能性が高まるわけです。
このことから、研究者は、ベスタの表面は常に新しい物質に更新されているということを見いだしています。
また、ドーンのデータを元にして、ベスタの内部構造を表した立体画像も公開されました。もちろん、内部構造は私たちは直接みることができませんし、まして立体的にみることなどまずできませんので、このような画像をもとにすると、重力データをもとにしたベスタの内部構造を知ることができるわけです。どうやらベスタの内部には、今まで考えられなかったような密度の領域があるようです。ドーンからのデータをみると、南極付近にそのような密度が異なる部分があるようで、これはレアシルビア盆地と呼ばれる場所(衝突クレーター)の近くに分布している、地下からきたとみられる物質と一致しているのではないかと考えられます。
一方、ドーンはこれまでに得られたことがないほどの高精度な小惑星表面の温度分布測定データも取得しています。それによると、ベスタ表面の温度は、日が当たっている最も高いところではマイナス23度、逆に影になっているもっとも冷えている場所ではマイナス100度にまで下がっています。大気がないため、表面の物質は急速に暖められ、また急速に冷えてしまうようです。
NASAのジェット推進研究所所属で、ドーンの副探査責任者でもあるキャロル・レイモンド氏は、「9ヶ月にわたるベスタ探査により、ドーンはこれまで、私たちが光の点としてしかみることができなかった巨大小惑星ベスタの真の姿をのぞき見ることができた。小惑星の秘密に、私たちは一歩近づいたのだ。」と述べています。
・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2012/apr/12-134_Dawn_Vesta_Details.html
・ドーン (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/pex_world/Dawn/