小惑星探査機ドーンは、約1年間にわたって行なってきたベスタ探査を終了し、間もなくベスタから離れ、次の目的地である準惑星ケレスへと向かいます。2つの天体に滞在して探査を行う深宇宙探査機はドーンが世界ではじめてとなります。
順調にいけば、ベスタからの離脱はアメリカ東部夏時間で9月5日(太平洋夏時間で9月4日)に予定されています。ケレスまでの飛行時間は2年半程となります。
2007年に打ち上げられたドーンは、昨年(2011年)7月にベスタに到着、さらにケレスには2015年の早い時期に到着する予定です。これまであまり調べられて来なかった「大きな小惑星」を直接探査するということで、非常に注目されている探査です。


ドーンはベスタを非常に詳細に調べ、この天体について多くの事柄を明らかにしました。これらの発見は、将来の小惑星への有人飛行にも生かされることになるでしょう。
ドーンによる探査の結果、この天体は過去に一度完全に溶けていることがわかりました。また、内部は層を成しており、中心部には(おそらく)鉄のコアが存在することも判明しています。また、ベスタの南半球部には巨大な衝突の跡があり、また過去20年間に2回の巨大な衝突を経験していることも明らかになりました。ドーンのように接近して調査する探査機がなければ、科学者はベスタの詳細について知ることはできなかったでしょうし、特にベスタに存在する巨大な溝状地形は、この探査によってはじめて明らかになったものです。
到着した時と同じように、ドーンはベスタかららせん状に飛行し、徐々に距離を離していくことになります。ドーンは「はやぶさ」と同様、キセノンを燃料とするイオンエンジン推進システムを使用しており、直径40センチほどのスラスターは、力は小さいものの、長時間稼働することによって大きな推力を得る仕組みとなっています。
ドーンの主席技術者であるマーク・レイマン氏は、「イオンエンジンは再び点火され、ドーンは次第にベスタかららせん状に離れようとしている。私たちは、ベスタでのあまりにたくさんの経験と成果を胸にここを去ることで、ちょっと寂しい気持ちに包まれてはいるが、今、私たちは次の目標地点であるケレスへと、目を向けている。」と語っています。
「私たちがベスタへと向かったのは、太陽系の歴史の空白を埋めるためだった。ドーンは、その空白を埋めてさらに余りあるほどの成果をもたらしてくれた。どうしてベスタが、太陽系初期の頃から生き延びてきた特別な天体になったのか、私たちが理解できたのだ。私たちは今、ベスタは普通の小惑星というより、むしろ小さくてもいっぱしの惑星に近いということをはっきりといえるようになった。」(ドーン計画の主任科学者でカリフォルニア大学ロサンゼルス校のクリストファー・ラッセル氏)