この7月16日にも小惑星ベスタに到着し、周回観測を開始する惑星探査機ドーンが、その目的地である小惑星ベスタをはじめて捉えました。JPL(NASAジェット推進研究所)からその写真が公開されています。

ドーンがはじめて捉えた小惑星ベスタ

この写真は、5月3日(アメリカ現地時間)に、探査機がベスタへの接近を開始した時点で撮影されたものです。ベスタまでの距離はこの時点で約121万キロメートル。撮影した時点ではこの距離ですからベスタはあくまで光の点としてしか写っていません。
ドーン計画の副探査責任者であるキャロル・レイモンド氏は、「数十億キロの航海ののち、ようやくここまで来た。この1枚の写真は、これからやってくる詳細な写真へと続くものだ。」と期待を語っています。

ベスタは、直径が530キロメートルの小惑星で、小惑星としては2番めに大きなものです(2006年に惑星の定義が変更され、これまで最大の小惑星とされていたケレスが準惑星に分類されたことで、ベスタは小惑星としては2番目の大きさに「昇格」しました)。発見から約200年ほど経過していますが、これまでは地上望遠鏡からの観測がほとんどで、その表面についてはほとんど知られていませんでした。
探査計画では、ベスタの周回軌道への降下は7月16日に開始されるとのことです。このためには、探査機の軌道はベスタの公転軌道と一致している必要があります。このため、ベスタがどう動いているのかを高い精度で知る必要があるのです。そのため、ベスタを遠くから写真に撮り、恒星(ほとんど動かない)に対してどのような動きをしているかを知ることが重要になってきます。今回の写真にはそのような意味もあるのです。
ドーンは、ベスタの周回軌道に投入されたあと、早ければ8月はじめからデータ取得を開始する予定です。周回軌道は高度約2700キロで、これによって、様々な角度からの表面の写真や、地形図などを作ることができると期待されます。
さらにその後、ドーンは高度を200キロまで下げ、より詳細な表層観測などをはじめとする様々な観測を実施する予定です。ベスタの周回軌道には約1年間にわたって滞在する予定で、その後ドーンはベスタを離脱し、2015年には次の目的地であるケレスへと向かうことになっています。
このように、小惑星帯に存在する2つの天体の詳細な観測を行うことで、特に太陽系の初期の歴史についての情報が得られる可能性があります。また、両者の比較により、小惑星帯の天体、特に大きな小惑星(といっても、ケレスはすでに準惑星と分類されていますが)について比較を行うことができ、これらの天体の性質をより深く知ることができるでしょう。
ドーンが調べるのは、表面の組成や地形、表層構造などですが、その他にも重力を調べることで内部構造の推定を行ったりします。
ベスタは周回軌道投入時には地球から1億8800万キロメートル離れたところにいる予定です。ドーンは、最終的にケレスへ到着するまでには50億キロもの飛行距離になる予定です。