NASAがホワイトハウスと共同で、小惑星探査フレームワーク「小惑星イニシアチブ」についての記者会見を行うという発表がありました。時間はアメリカ東部夏時間で15日午前11時、日本時間では16日午前0時となります。

岩をつかんで離陸する小惑星捕獲機の想像図

岩をつかんで離陸する小惑星捕獲機の想像図(Photo: NASA)

小惑星イニシアチブは、NASAが2013年に発表した新たな小惑星探査の包括的な枠組み(フレームワーク)です。大きく2つの内容に分かれており、1つは小惑星から岩を持ち帰り、地球近傍で有人探査を行う計画(ARM≡アーム)、もう1つは地球に衝突する可能性がある小惑星を産学官の枠を超えて監視する計画「小惑星グランドチャレンジ」です。

現時点でNASAからアナウンスされている内容は、この計画のうち、ARMについて3つの大幅なアップデート(記者会見アナウンスの原語では「three virtual update」です)を行い、その内容については、ARM計画の有人火星探査計画への貢献と、惑星防衛(原語ではprotection of our planet。事実上、上記の「小惑星の地球衝突の監視」と同義です)への貢献についての内容になるとしています。

記者会見は3部構成で、

  • ARM全般についての説明…現地時間15日午前11時から
  • ARMの開発・コミュニティについての最新状況の説明…現地時間15日午後0時から
  • フェイスブックでのオンラインQ&A…現地時間15日午後3時から

となっています。ARMの計画変更の重要な点は第2部からの説明になると思いますが、まずは第1部にて概要が伝わってくると思います。

また、記者会見の出席メンバーも豪華で、NASAのチャールズ・ボールデン長官の他、ホワイトハウスの科学技術担当大統領補佐官のジョン・ホールデン氏、ARMのプロジェクトマネージャーであるミシェル・ゲーツ氏が氏が出席します。

今回の記者会見の内容は現時点で不明ですが、NASAが小惑星イニシアチブの位置づけを、昨年くらいから少しずつ「有人火星探査計画への前哨戦」と位置づけていたことをみると、この路線をホワイトハウス(アメリカ政府)とも共同で進める、つまり、計画をより前進させていく何らかの新たな戦略が発表されるのではないかとも考えられます。
一方で、ARM計画については議会でも評判が芳しくなく、アメリカの2017年会計年度(ちょうど来月1日から始まります)ではこのARM計画についての予算が計上されていないようです。また、議会に限らず、技術的な側面からも批判が多く、特にARM計画の後半にある有人での探査(小惑星の一部を捕獲してきた宇宙船に有人宇宙船オライオンがドッキングし、小惑星の探査を行う)という部分については無駄ではないかという議論もあります。さらに、計画が全体に遅れ気味で、本来予定されていた2017年の小惑星捕獲用の無人探査機打ち上げはどうみても不可能な状況です。

このような状況、とりわけ会計年度の始まりと、来たるべき大統領選挙を控え、NASAとホワイトハウス(実質的にこの計画はオバマ政権下における宇宙計画の見直しのもと始まったという点に留意する必要があります)とが計画見直しに向けて動き出し、小惑星イニシアチブ、及びARM計画の位置づけ、さらには計画そのものについて大幅な見直しを発表するのではないかと私(編集長)は考えています。

なお、記者会見の説明には、

ARM計画は、将来の有人火星探査レベルのミッションを地球に近いところで実証するという目的があり、火星飛行における技術的・運用上の問題を見出すという目的があります。また、小惑星の軌道を変換する(軌道をそらす)という技術的な課題のテストも含まれていますし、これが実用できれば、将来の小惑星の地球への衝突という大きな問題への対処に重要な貢献になるでしょう。

と記されています。ARM計画が有人火星探査にいかに役立つのかという文脈が強調されている内容で、以前の「小惑星を捕獲する」という点へ力点を置いていた内容からかなり変わってきているということが重要かと思われます。

いずれにしても、どのような内容が発表されるのか、要注目です。

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