ロシアが計画し、今年10月に打ち上げを予定していた火星探査機、フォボス・グルントと、同じロケットに相乗りして火星に向かう予定だった中国初の火星探査機、蛍火1号の打ち上げが、約2年延期されることになりました。ロシア宇宙科学研究所(IKI)の所長、レフ・ツェレニー氏が公式に声明を発表し、「難しい決定だった」と述べています。
フォボス・グルント(英語では「フォボス・ソイル」)は、火星の衛星フォボスに飛行し、そのサンプルを取得して地球に持ち帰るという探査です。延期の原因として、ツェレニー氏は、「最終的にいくつかのポイントを確認できなかった」という点を挙げています。
「我々は20年間にわたって火星探査を経験していない。従って、ロシア科学アカデミーにはすべてについての点検を必要といわれている。」
また、資金的な面についても言及しており、おおむね順調であるが若干の問題があることも述べています。
なお、火星打ち上げの次の機会は、2011年11月以降になるとのことです。
フォボス・グルントの打ち上げ延期に伴い、相乗りの蛍火1号も延期されることになりましたが、中国からは公式の発表は今のところありません。
(編集長注)
ツェレニー所長が言及した「20年間経験がない」という言葉は、ロシアが最後に火星近辺にまで打ち上げた探査機「フォボス」についてのものです。このフォボス探査機は、旧ソ連が1989年に打ち上げましたが、2機とも火星近辺で行方不明になるという結果に終わりました。さらに、その後1996年に打ち上げた火星探査機「マルス96」は、ロケットの不具合により地上に落下するという形で終了することになりました。このようなことから、今回はロシア側として、慎重を期して打ち上げを延期する(他国の探査機を相乗りさせているにもかかわらず)という難しい決定を下したものと思われます。
・フォボス・グルントが2011年まで延期 (RIAノーボスチ通信: ロシア語)
  
http://www.rian.ru/science/20090921/185905786.html

・Russia postpones sample mission to Martian moon until 2011 (新華社: 英語)
  http://news.xinhuanet.com/english/2009-09/22/content_12098140.htm
・これまでの火星探査 (月探査情報ステーション)
  http://moon.jaxa.jp/ja/mars/explorer.html
・フォボス・ソイル計画/蛍火1号 (月探査情報ステーション)
  http://moon.jaxa.jp/ja/mars/exploration/future.html#PHOBOSSOIL
・本記事は、大谷俊典様のご協力をいただきました。