本日(3月28日)、月探査情報ステーションはリニューアルから1周年を迎えました。
月探査情報ステーションは、2003年にリニューアルして以降、予算や人員不足からリニューアルが行えてきませんでした。その間にウェブ技術は長足の進歩を遂げ、新しい規格が次々に導入され、利便性が向上しました。その一方で、2003年当時の技術のままの月探査情報ステーションのページはどうしても見劣りが発生し、ユーザーの皆様にご不便をおかけしてきました。
さらに、近年はスマートフォンをはじめとする携帯機器からの閲覧が大変増えてきておりましたが、旧来の月探査情報ステーションのページはパソコンのブラウザーでの閲覧を前提に設計されているだけでなく、その設計も2003年当時のパソコンの画面や処理能力などを前提にしておりましたため、スマートフォンなどで見ると画面が小さすぎ、閲覧に困難をきたす状況でした。
また、少なくとも3000ページ以上もある大規模ウェブサイトであるにも関わらず、こういった大規模サイトであれば当然のように備えているコンテンツ管理システム(CMS)がないため、複数人での編集ができない、ファイルベースですべて管理しなければならないなど、多大な手間と労力を強いられる状態でした。
このような状況を改善し、近代的なウェブサイトとして月探査情報ステーションをよみがえらせるため、計画期間2年と半年の移行期間を経て、2016年3月28日、リニューアル後の月探査情報ステーションをオープンしました。
新しい月探査情報ステーションは、サイトの基盤として、世界中のウェブサイトで使われている標準的なウェブプラットホーム「ワードプレス」(WordPress)を全面的に採用しました。ワードプレスはもともと月探査情報ステーションブログでも使用しておりましたが、今度はサイト全体にわたりコンテンツ管理を担うという役割になりました。
ワードプレスはその使いやすさとモバイルへの対応などに定評があります。ワードプレスが持つモバイル対応機能により、月探査情報ステーションはモバイル機器からのアクセスにも十分対応できるサイトになりました。実際、リニューアルの後で、スマートフォンなどのモバイル機器からのアクセスが増加していることが確かめられています。
ワードプレスの採用により、ワードプレスをCMSとして活用することにより、記事の迅速な執筆や複数人での執筆などができるようになり、効率が大幅に向上しました。
デザインは、以前の原色系のポップなデザインに変わり、パステルカラーをモチーフにした柔らかいデザインを採用しました。フォントや色合いなどは女性ユーザーを意識したものとなっており、実際、リニューアル後は女性ユーザーが増加しております。
リニューアルに際して、古いコーナーの廃止、一部コーナーの統合など、現状に即した内容の変更も実施しました。
こうして始まったリニューアルですが、その後、困難を迎えることになります。
ワードプレスはシステムに大きな負荷をかけるため、それまでのファイルベースでの閲覧に対してシステムへの負荷が急上昇し、たびたびサーバーや基盤システムが停止することになりました。急ぎシステムの強化などを実施しましたが焼け石に水で、ちょっとしたアクセス増などでもすぐにサーバーが無反応となり、皆様にご迷惑をおかけすることになりました。それだけでなく、記事作成などの作業も止まってしまい、維持管理にさえ支障をきたす状態となりました。
このような状況を解決すべく、新たに導入されたプラットホームがクサナギ(KUSANAGI)です。
プライム・ストラテジー株式会社様で開発されたKUSANAGIは、ワードプレスを実行することに特化した環境を持ち、この「重い」ワードプレスを超高速で実行することが可能です。また独自の工夫によりセキュリティが向上しているほか、サーバー管理なども一般的なサーバーに比べてよりやりやすくなっているという点が特徴です。
月探査情報ステーションでは、アクセスが多くなる7〜10月より前にサーバーの移行を実行すべく各種作業を行い、リニューアルからちょうど3ヶ月目となる6月28日にKUSANAGIサーバーによる運用を開始しました。KUSANAGIのキャッチフレーズである「1000倍速い」がまさに実現され、システムは安定して稼働、1年で最もアクセスが殺到する中秋の名月の日にも安定して動作しました。
また、月探査情報ステーションのような大規模サイトでの運用例はなかなか珍しいということで、プライム・ストラテジー株式会社様にも運用事例として取り上げていただくなど、先駆的な試みを実施することとなりました。
さて、リニューアルから1年が経過し、月探査情報ステーションのコンテンツは以前とは比べものにならないほどビジュアルになり、モバイル対応となりました。この影響もあって、アクセスの傾向が徐々に変わり、携帯端末からのアクセスが上昇しています。そのためか、従来より若い年代のアクセスも増えているようです。
一方、リニューアル直後はサーバー負荷・停止への対応で、KUSANAGI移行後は(サーバーとは関係ないのですが)各地への講演・学会で、その後は合同会社の立ち上げや学校の用事などで非常に忙しく、コンテンツの充実が思っていたほど進んでいません。
とりわけ、月探査情報ステーションの柱といえる月・惑星探査関係のコンテンツ「月探査」(旧「月探査機」)、「惑星探査」(「惑星探査」コーナーは、従来の2コーナー、「世界の惑星探査」と「はやぶさ」を統合したものです)、「火星・赤い星へ」への移行は当初の予定よりも大幅に遅れています。本来であれば1年以内に新サイトへすべて統合される予定でしたが、現時点で移行できているページは半分以下となっています。また、新サイトにおいても本来であれば完成・公開されているべきページが未だ公開できていません。例えば、火星探査機「エクソマーズ」のページはトピックス(ブログ)と概要のみで、他のページが未だできておりません。
さらに、当初のリニューアルから外れたものの、人気があるお楽しみ系コンテンツ「今日の月」「クイズ」「月探査占い」も移行ができておらず、特に「クイズ」「月探査占い」についてはプログラムが動かないなど支障が出ている状態です。
まずは探査系3つのコーナーの移行を早急に進めます。探査系のコーナーは単にページを新サイトへ移行すればよいだけではなく、それぞれの情報を新しいものに書き換えながら進めなければならないため、多くの時間をとることになってしまっていますが、それでも少しずつ進めていく予定です。
お楽しみ系コンテンツについては、最もアクセスが多い「今日の月」について、新サイト上への移行を目指したデザイン設計などを開始し、早ければ今年中にも移行を完了させる予定です。他の2つのコーナーにつきましても、少なくとも旧サイトの状態で稼働ができるよう、サーバー設定の見直しなどを実施していく予定です。
さらに、セキュリティの向上などを目指し、近日中に月探査情報ステーションも常時SSL化を実施する予定です。
常時SSL化とは、月探査情報ステーション全体(つまり、moonstation.jpはいか全体)について、SSL通信によるアクセスとすることです。現在は月探査情報ステーションのアクセスは通常のHTTPというアクセスですが(http://moonstation.jp/〜)、これをSSLという仕組みを利用した、安全なアクセスに切り替えます(https://moonstation.jp/〜)。
SSLによるアクセスは、閲覧した内容や入力した内容が暗号化されるため、第三者に内容が知れ渡らないというメリットがあります。通常のサイトであっても、どのようなページを閲覧したかどうかを第三者に知られたくないという要望は数多くあります。このような要望を受けて、一般的なコンテンツを提供するページも常時SSL化(AOSSL: Always On SSL)を行う流れになっています。皆様がよくご覧になるサイトでは、例えばウィキペディアもすでにこの常時SSL化を実施しています。
月探査情報ステーションもこの流れを受け、常時SSL化を実施し、皆様により安全なアクセスをご提供いたします。
詳細については月探査情報ステーションで随時アナウンスいたしますので、最新情報のこまめなチェックをお願いいたします。
月探査情報ステーションがより多くの資金を獲得できれば、人を雇ったり複数の作業を同時進行するなどこれらの作業をより本格化できるのですが、現在の状況では見通しを述べるのが精一杯というところです。それでも、1つ1つ作業を着実に進め、皆様の利便性を向上させていくことを目指してまいります。
10年前には月探査情報ステーションは運営の予算もなく、1人で黙々と更新を行うしかなかったという状況でした。それを考えますと、これだけ、ある意味ぜいたくなプラットホームを得ることができましたのも、ひとえに皆様のご支援、ご支持のたまものと考えております。改めまして。ふだんより月探査情報ステーションを支えて下さるユーザーの皆様、パートナーの皆様にお礼を申し上げます。
今後とも月探査情報ステーションをご支援頂きますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
2017年3月28日
月探査情報ステーション 編集長
合同会社ムーン・アンド・プラネッツ 代表
寺薗 淳也