小惑星から資源を採掘することを目的に設立されたプラネタリーリソーシズ社は、このほど、一般の人たちも利用することができる宇宙望遠鏡を打ち上げる計画を発表しました。
さらにこの望遠鏡は、広く一般の人から資金を募る「クラウドファンディング」という方式で資金を集めて建設する計画です。

今回の望遠鏡は、アーキッド(ARKYD)望遠鏡と名付けられており、一般の人、とりわけ、学生や科学者、さらには若い人たちに使ってもらうことを主眼としています。
クラウドファンディングでは、インターネットサイト「キックスターター」(kickstarter.com)を利用し、このサイトを利用して100万ドル(日本円で約10億円)を集める計画です。集めた資金は、望遠鏡建設はもちろん、一般の人たちとをつなぐための基金の設立、以下に挙げる約束の実現、さらには教育のためにも使われます。さらに、目標を超える資金が集まれば、より多くの生徒・学生たちの教育に資金が回せることとなるほか、科学館や博物館での利用、さらにはキックスターターを通して資金を提供した人たちへの特別な利用権などの手強も可能になってきます。

今回、プラネタリーリソーシズ社は、以下の点を約束しています。

  • 25ドルを提供した人には、望遠鏡にその方の好きな写真をアップロードし、それを地球を背景にした写真として送り返します。「フォトブース」と呼ばれるスペースでは、出資者が地球を背景にしたスナップ写真を撮影することができ、ひととき宇宙との一体感を味わうことができるようになります。
  • さらに上位の約束として、学生や天文学者、研究者といった人たちには、アーキッド望遠鏡のメインとなる部分を操作し、銀河や惑星などの観測を行うことができます。
  • 最上位の約束として、この望遠鏡を使って、小学校や科学館、大学、あるいは天文・宇宙に関心を持つグループに対し、望遠鏡を教育プログラム目的で利用することができるようにします。これはアメリカに限らず世界中の誰もが利用できます。

今回の計画に際し、長年火星ローバーの開発に携わってきた、プラネタリーリソーシズ社の代表取締役兼最高技術者であるクリス・ルウィッキ氏は、「私は長年火星ローバーに携わり、火星の表面からの映像を見続けてきた。その興奮をこれからはみんなと共有することができる。どんな年齢の人でも、どんな経歴の人でも、太陽系やはるか遠い宇宙を調べるために望遠鏡を空に向け、さらには私たちの探査目標である地球近傍小惑星を調べることができるのだ。」と、計画の意義を語っています。

同社の共同設立者、共同議長であり、世界ではじめて、純粋に民間の資金で宇宙への飛行を実現させたピーター・ディアマンテス氏は、「この会社を昨年設立した際に、一般の方から非常に大きな反響をいただいた。何万人という方が興味を持ち、この計画に参加したいと申し出て下さった。このような人たちに積極的に参加してもらうために、今回(クラウドファンディングの手法を採用して)キックスターターを利用することにした。この50年間、宇宙開発は国家によってのみ進められ、国家が設定した目標にのみ沿って行われてきた。しかし我々は探査というものの質を変える。我々は現代最高の技術を誇る望遠鏡を一般の人たちに使えるようにする。一緒に宇宙を探検しようではないか。」と、この望遠鏡にかける熱意を語っています。

また、共同設立者・共同議長であるエリック・アンダーソン氏は、「昨年4月の会社設立の発表以来、会社の大きさは2倍になり、戦略的パートナーを得ることができ、たくさんの契約を締結し、この10年で資源採掘にふさわしい小惑星を発見するという私たちのミッションを順調に達成しつつある。」と、プラネタリーリソーシズ社の現状について語っています。

マサチューセッツ工科大学の物理・惑星科学の教授であるサラ・シーガー博士は、「アーキッド望遠鏡建設のためのクラウドファンディングという計画は驚くべきものである。望遠鏡が私たちの宇宙に関する知識を広げるというだけではなく、その望遠鏡が驚くほどの低予算で打ち上げられるということも驚異的だ。このような計画が、現在、そして将来の宇宙科学を飛躍させることにつながるだろう。」と、研究者としての期待を述べています。

今回の計画のために、プラネタリーリソーシズ社は多くの企業・団体とパートナーシップを結んでいます。例えば、アメリカ・ワシントン州シアトルにある航空博物館、カリフォルニア州ロサンゼルスにあるグリフィス天文台、ニュージャージー州にあるリバティー科学センター、テキサス州ダラスにあるペロー自然科学博物館、バージン・ギャラクティック社、アメリカ惑星協会などです。この惑星協会会長であるビル・ナイ氏は、「宇宙機開発技術とクラウドファンディングのすばらしい融合だ。世界中の生徒・学生たちが加わることができる…いや、世界の『上にいる』人たちも」と、手放しで喜びを語っています。

この資金キャンペーンは6月末までの33日間行われる予定です。