普通、衛星のイラストや写真をみると、衛星の表面は金色の布のようなもので覆われています。これは、衛星がMLI(多層断熱材)と呼ばれているもので覆われているためです。
宇宙空間には空気がありません。そのためそのため、そのままでは日の当たるところでは直射日光で温められることになり、一方日光の当たらないところは放射冷却によって極端に熱を奪われてしまいます。
これらの温度環境から衛星に搭載される機器類をを守るため、衛星の表面はMLIと呼ばれる薄い膜素材で覆うのです。
さて「かぐや」が黒い理由ですが、実はこのMLIの表面が黒いからなのです。では、なぜ「かぐや」はこのMLIを使うのでしょうか?
その答えは、「かぐや」の観測性能を上げるためです。「かぐや」は月そのものを観測するけでなく、月の周り宇宙空間の環境を調べる装置や、月から地球を観測する装置など、数多くの装置を搭載しています。このような装置がお互いに正確な観測を行えるようにするためには、衛星の内部から漏れ出してしまう電磁場をなるべく小さくしなければなりません。
「かぐや」が使う黒いMLIは、通常使われる金色のMLIに比べて、衛星の内部から発生してしまう電磁場を外に漏らさないようにする効果が優れています。そのため、「かぐや」にはこの黒いMLIが使われることになり、全体が「真っ黒」にみえるようになっているのです。
「かぐや」の新しい(実際に打ち上げられた形に近い)イラスト
「かぐや」の1990年代後半当時のイラスト。
全体が金色のMLIで覆われているのが当時の想像図。
2007年6月、種子島宇宙センターで報道公開された「かぐや」。
確かに全体が黒いMLIで覆われている。
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出典: JAXAデジタルアーカイブス, Photo: JAXA
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