昨年8月まで探査を行っていたインドの探査機、チャンドラヤーン1の探査結果から、月の北極に大量の氷(水)が存在することがわかりました。
この発見の元となるデータは、チャンドラヤーン1探査機に搭載されていた小型合成開口レーダー(MiniSAR、現在ではMini-RFとも呼ばれる)です。この装置は、電波を地表に発射し、それを特殊な方法で解析することにより、地表の様子を調べるものです。
今回、40以上のクレーターに氷(水)の存在が確認されました。クレーターの直径は2~15キロほどで、どの程度の厚さで氷が堆積しているかは確認されていませんので正確な量はわかりませんが、推定ではおそらく総量で6億トンにも上るのではないかと思われています。
チャンドラヤーン1に搭載されたこの小型合成開口レーダーは、電波を使うという利点を生かして、光が当たらない、月の北極のクレーターの中の探査を行いました。この領域は「永久影」と呼ばれ、地球からはみえない領域にあります。レーダーでは電波の極性を用いた探査を行い、その結果、反射は氷に似た特性を示していたということです。
今回の発見は、まもなく発表される専門誌、地球物理学雑誌(GRL: Geophysical Research Letters)に掲載されます。
この発見について、小型合成開口レーダーの主任科学者で、月探査に長年関わってきている月惑星研究所(LPI)のポール・スプーディス博士は、「いろいろなデータを総合すると、月では水が蒸発し、移動し、表面にたまり、一部はそれがずっと堆積していることは明らかだ。今回の発見で、月はこれまで考えられていたよりさらに興味深く、魅力的な場所であるということがわかってきた。」と述べています。
(注)月の水については、同じチャンドラヤーン1に搭載されていた月面鉱物マッピング装置(M3)の観測データから、やはり水の存在を確認したという成果が、昨年の9月に発表されています(下記リンク参照)。
・NASAのプレスリリース (英語)
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2010/mar/HQ_10-055_moon_ice.html
・チャンドラヤーン1など3衛星の観測により、月面に水の存在が判明 (月探査情報ステーションブログ: 2009年9月28日)
http://moon.jaxa.jp/blog/index.php?itemid=139&catid=16
・チャンドラヤーン1 (月探査情報ステーション)
http://moon.jaxa.jp/ja/history/Chandrayaan-1/