不具合の発生で探査の先行きが一時危ぶまれたニューホライズンズですが、故障原因の解明も進み、故障の回復へ向けての作業も順調に行われています。プロジェクトチームでは、通常の科学観測が行える状態への復帰は7日中(日本時間では8日未明)になるとしています。

現在、ニューホライズンズ探査機は通常通りメインコンピューターで(予備のコンピューターではなく)動作しており、通常の科学観測への復帰は、アメリカ東部夏時間で7日の午後0時34分(日本時間では8日午前1時34分)となる予定です。すでに、冥王星再接近時に使用する探査機のプログラムは探査機に向けて送られているとのことです。

今回の故障の原因は、ニューホライズンズのメインコンピューターが、探査機に設定されていたプログラムのタイミングの問題で負荷がかかりすぎた状態に陥ったためのようです。コンピューターが、科学データの圧縮という、それだけでもかなり負荷の高い処理を行っているところに、さらに多数の非常に負荷の高いコマンドを実行しようとしたため、止まってしまったようです。そのため、コンピューターは事前にプログラムされた通り、「セーフモード」という安全状態に入り、同時にコンピューターは予備のコンピューターに切り替わったというわけです。

今回、修復には3日を要したわけですが、そのために30回の観測機会が失われてしまいました。ただ、これはニューホライズンズが7月4日〜16日に実施する予定の科学観測全体の1パーセントにも満たない回数であり、さらにいえば、最接近時の観測にも何ら影響を及ぼしてはおりません。同じような操作はこの先冥王星最接近時までないことから、このような異常が起きる可能性は再接近の前にはもうないということです。

「歴史的なミッション全体からみれば、今回のことは、減速用の舗装みたいなものだ。私たちが間もなく、冥王星の表面を世界ではじめてみることになったら、みんな驚嘆するだろう。間違いない。」と、プロジェクトマネージャーのアラン・スターン氏は余裕の構えです。

一方、NASAの惑星科学担当理事のジム・グリーン氏はやはり多少心配だったようで、このように述べています。「ニューホライズンズの不具合が迅速に対処されたことにほっとしている。早く科学観測に戻り、大きな成果を得たいと思う。」