「月の起源」については、これまで様々な説が提案されてきました。しかし、探査が進んだ今でも、絶対的に正しいとされる説はありません。
古くから唱えられてきた月の起源に関する説は、大きく3つに分けることができます。これらの説はそれぞれに、長所と短所を持っています。

月の起源についての3つの説

捕獲説
月は地球とは全く別なところで誕生し、その後地球に捉えられたという考え方です。
地球と月との違いは説明できますが、理論的には、宇宙をさまよっている天体を地球が捉えるということはきわめて難しく、あり得ないといってもいいことです。
分裂説
月は地球から飛び出してできたという説です。
確かに月の物質は、地球内部のマントルの物質と比較的似ています。
しかし、固い地球から月が分裂するためには、地球の自転速度が相当に速くなくてはなりません。
双子集積説
月は地球の周りで地球とは独立に作られたという考え方です。
月と地球が似たような物質からできている点をはじめとして、月と地球の特徴をよく説明できます。
しかし、この説では月の運動の特徴(月と地球の角運動量)を説明することができません。

月の起源についての4つめの説

最近になって、これらの説では説明できなかった事柄を説明できる理論として、『巨大衝突説』がにわかに注目を浴びてきました。

巨大衝突説

誕生してまもなくの原始地球に火星くらいの大きさの巨大な天体が衝突し、その衝撃で飛び散った原始地球と衝突天体、両者のマントル物質が軌道上で集積して、月を形成したとする説です(下の図を参照)。
この巨大衝突説は、これまで考えられてきた、捕獲説、分裂説、双子集積説のちょうど間をとったような形になっています。これまでのところ、月に関する事実をうまく説明できるため、現在ではこの説がもっとも有力とされています。

「巨大衝突説」による月のできるまでの過程


以上のように、月の起源に関してはいくつかの説がたてられており、有力なものはあっても、決定的なものはありません。これは、我々が月に関して知っている事実が、まだほんのわずかだからなのです。
今後の探査により、より細かい月についての事実が明らかになれば、これらの説が本当に正しいかどうか、検証できることになるでしょう。


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