これまでこのブログでも韓国の月探査計画について伝えてきました。非常に急いでいることから現実性について私としては疑問を持っていましたが、それでも着実に進んでいるようです。それを示す情報が、NASAから届きました。
NASAはこのほど、2018年末に打ち上げ予定の韓国の月周回衛星へ機器を搭載するための公募(AO: Announcement of Opportunity)を発表しました。アメリカの公共事業について告知するサイト、FBO (Federal Business Opportunities,  http://www.fbo.gov)のページでみることができます。

この資料では、韓国の月探査衛星の名前は「先駆型月周回衛星」(Korea Pathfinder Lunar Orbiter, 以下KPLO)というものになっています。
このKPLO衛星に搭載する機器の公募で、この衛星が韓国航空宇宙研究院(KARI)が主導する韓国月探査プログラム(KLEP: Korea Lunar Exploration Program)の第1弾として打ち上げられることが書かれています。

KPLO衛星の打ち上げは2018年12月の予定で、技術実証、及び月周回軌道からの科学観測を目的としています。KARIがNASAとパートナーシップ協定を結んでいることで、今回の機器搭載が実現したとのことです。
搭載する機器は、月資源のその場利用(ISRU: In-Situ Resource Utilization)に向けた月表面の物質の研究に資するものとなっています。

この資料で注目すべき部分は、打ち上げが2018年12月に行われると明記されている点でしょう。もちろん、現時点でそのような形になっているということではあると思いますが、韓国の月探査で打ち上げ年が明記された資料というのははじめてではないかと思われます。

なお、韓国の月探査は、今回はじめて名前が明らかになったこのKPLOという第1弾の衛星の打ち上げに続き、2020年に本命となる月着陸・ローバー探査衛星が打ち上げられることになっています。
ただ、それらを開発中の国産ロケットKSLV-2で打ち上げるという構想にもかかわらず、ロケットエンジンの開発などは難航しており、試験打ち上げは早くても2018年10月頃になるとみられています。そうしますと、KSLV-2の試験機を打ち上げたわずか2ヶ月後に月探査衛星を打ち上げるという極めて無理のあるスケジュールになってしまいます。そもそもこの2018年10月というのも「現時点で最良の」スケジュールでこれから先開発が進んだ場合であり、日本も含めた他の国のロケット開発と同様、遅れることはまず間違いないと考えられますので、上記の2018年12月の月周回衛星打ち上げというスケジュールは現時点では厳しいと、編集長(寺薗)はみています。
それでも機器搭載の公募が出ているのは、NASAとKARIとの協定の一環であり、現時点の予定に従って「粛々と」アナウンスが出ているのだと考えた方がよいでしょう。