太陽の周りを回る、小さな天体

小惑星は、その名の通り、小さな「惑星」です。大きさは普通の惑星などに比べると小さいのですが、惑星と同様、太陽の周りを回る(公転する)天体です。衛星との違いは、衛星は惑星(小惑星のこともあります)の周りを回ることです。
かつては、小惑星には厳密な定義がなく、「惑星よりは小さいが、太陽の周りを回る天体」というかなり大まかな分類しかありませんでした。しかし、観測技術が進歩し、様々な天体が見つかるにつれて、この定義では限界がやってきました。現在では、太陽系の天体は、惑星、準惑星、太陽系小天体という分類に分けられ、この中で、太陽系小天体の中に、小惑星が属します。
上で述べたように、観測技術が進歩してきたここ20~30年ほどで、小惑星の発見数は激増しています。現在、観測によってその軌道が確定している小惑星だけで既に20万個を超えています。この数はまだまだ増えるとみられています。
なお、英語では小惑星のことを「アステロイド」(asteroid)といいますが、これは「星に似たもの」(aは「近い」という意味の接頭辞、sterは「星」のstar)という意味です。これは、小惑星が発見された当時は、恒星のようにみえるものの、やや暗くみえていたことからきています。

形がいびつなものがほとんど

小惑星は、その多くが地球のような球形ではなく、不規則な形をしています。
これは、小惑星そのものが小さいことと関係があります。
天体は大きくなればなるほど、自分自身の重力(重み)により、内部へと引っ張られます。そうしますと、中心から重力が均等な形、つまり球形になろうとする傾向があるのです。このため、ある程度以上の大きさの天体はだいたい球形になります。
一方、小惑星はそこまで大きくないので、自分の重力を自身の構造で十分支えられます。そのため、不規則な形のまま残っていることが多いのです。
「はやぶさ」が小惑星イトカワに接近し、最初に写真を撮影したとき、その異様な形に多くの人が驚きましたが、小惑星はむしろ球形のものの方が少なく、イトカワのような不思議な形をしているものがほとんどです。

大部分は小惑星帯にあるが、一部は地球の近くにもある

小惑星は、その多くが、火星と木星の間にある、小惑星帯(アステロイドベルト、またはメインベルトとも)に存在します。この領域に小さな天体がたくさん存在する理由は、いまだに解明されていませんが、木星の重力によって、この領域に存在した天体が惑星へと成長できず、太陽系が形作られた当時の小さな岩石、あるいはそれより少し進化した小天体のままになっているという説が有力です。
小惑星の中には、この小惑星帯から離れた場所に存在するものもあります。特に、地球と同じような軌道を公転する(太陽の周りを回るが、その公転半径が地球の公転半径に近い)ものは、地球の近くにいる小惑星という意味で、地球近傍小惑星(NEA: Near Earth Asteroid)と呼びます。
地球近傍小惑星は、おそらくは小惑星帯にあった天体のうち、一部が他の惑星の引力(木星など)の影響によって軌道を変えられ、現在の位置に落ち着いたのではないかとみられています。現在までに数千個の地球近傍小惑星が見つかっています。
今回の「はやぶさ」の探査で目的となった小惑星「イトカワ」も、このような地球近傍小惑星の1つです。
地球近傍小惑星は、地球に比較的近いことから、このような探査を行う上で行きやすく便利ではありますが、一方では地球に似た軌道を回っているということで、将来地球に衝突する可能性を秘めています。その確率はごくわずかではあるとはいえ、0ではありません。特に、6500万年前、恐竜など大量の生物が絶滅した原因として、このような小惑星の衝突が起きたという説が有力になっており、地球近傍小惑星の研究は、このような意味でも重要です。


惑星探査 トップへ