平成12年12月1日より平成13年1月31日まで「月に関する俳句」を募集いたしました。全部で100首の応募がありました。

 当初は優秀作2作品とさせていただいておりましたが、応募数が多かったこと、また各句ともいずれ劣らずすばらしい句であることから、今回は優秀作を3作品とさせていただきました。

最優秀賞

声あげて 娘ゆびさす 昼の月

望月 園子 様 / 東京都

・ 見たままを素直に表現しておられ、娘さんの驚きが読者に良く伝わっています。
・ 娘の元気な様子や親子の明るい心のふれ合いが昼の月に見事に重ねられていると思います。
・ お子さんの驚きの表情が目に見えるようです。この後の親子の会話は、きっとほのぼのとした楽しいものでしょうね。

優秀賞

実る穂を 照らし包める 月の影

中村 恵美 様 / 埼玉県

・ 稲穂を月光が包んでいるようだと詩的に表現しておられます。
・ 月は農耕の神様としてもあがめ奉られてきましたから、収穫を実りの神様が包み込んでいるという意味でも、絵画的イメージの面でも良いではないかと思っています。

月の海 君想うほど 満ちてゆく

momo 様 / 新潟県

・ 恋心を潮に託して表現、この「月の海」は美しい。
・ 「海」と「満ちる」。月の上の海にいるような想像も感じますし、まさに夜の海で、恋の想いが自らの体の中に満ちていくような感覚をも感じさせます。何か、「ぞくぞくするような」感じさえします。
・ 月を見上げながら愛しい人を想っているのでしょう。相手への想いと、海が「満ちる」という表現がうまく重ねあわされていると思います。

告白を 今宵の月の せいにする

もも 様 / 大阪府

・ 月の美しさが、月の明るさが、その人の心を開かせたのだと思います。恋句として強く惹かれました。
・ 告白に至る気持ちが月の様子に重ねて表現されています。満月だったのか定かではありませんが、月に力を借りること、月が力を与えてくれることもあるということを再認識させてくれた一句です。

佳作

塵置場 猫と目が合い 冬の月

楽天女 様 / 埼玉県

・ 塵置場という生活臭のある場所、猫も生きるために其処にいます。冬月が冷たく其処を照らしているのです。

嬰泣 (ややな) きて 乳あふれ出る 春の月

平野 露璃 様 / 北海道

・ 生命の賛歌と春月の取り合わせは合っています。
・ 人の生命力が春の月に重ねられています。「あふれ出る」が乳と月にかかっているのは見事です。

美しき 月を眺めて 手を合わす

加藤 保 様 / 静岡県

・ 「手を合わす」で月の根源的、精神的美を感受なさったことが想像されます。

月に吠え 我に吠えたる 野犬 (やけん) かな

羽田 康司 様 / 埼玉県

・ 一見殺伐とした景が思い浮かびますが、その奥にある寂寥感のようなものを感じました。

月明かり 乙女の髪を そっと撫でる

やっこ 様 / 富山県

・ 月明かりだけに艶めかしさが膨らみます。
・ 情感の表現が勝れていると思います。

 

選外応募作

満月を 掴むふりして 柿泥棒

 (阿城 はるお 様 / 大阪府)

月夜には 庭の狸も 目が光る

 (ユー 様 / 奈良県)

新鮮に 輝く月の ミレニアム

 (ミー 様 / 奈良県)

新世紀 月への旅行 春の夢

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

寒月に 竿先ふるう 冬の夜の

 (水野亜美 様 / 愛知県)

鍋囲み 仰ぎみ月は 箸の数

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

おいしそう 眺めるだけで 欠ける月

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

星空を 望むが月は 幕を引く

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

とぼとぼと 家路を照らす 青白さ

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

月あかり 太陽が反射 望遠鏡

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

いつかは 人参持って 月旅行

 (やっこ 様 / 富山県)

天高く 優雅に誘う 月の船

 (やっこ 様 / 富山県)

長月 (ながつき) を 切り抜く月に 吸い込まる

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

月もまた 還 (かえ) す二十世紀 (せいき) の 師走かな

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

雪の舞台 月が主役の 幻想劇

 (やっこ 様 / 富山県)

うさぎがね ついたお餅が 月になるよ

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

枯れ枝に 重なる月と お正月

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

生まれたて もみじな手と顔 お月さま

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

月の使者 はかなき人世 幸多かれと

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

窓越しの 月に指筆 雫星 (ながれぼし)

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

冬晴れに 沈む陽あれば 昇る陽あり

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

並木道 落陽と月で 黄金色

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

夜道ゆく 月も演出 影もゆく

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

夜道ゆく 月は脇役 影がゆく

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

星呼びて 月も宴の 聖夜 (クリスマス)

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

月ひとつ 宇宙 (そら) いて聞けり 除夜の鐘

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

月灯 (つきあか) り 冬の学舎を 照らし見ゆ

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

降る雪と 妖 (あや) しく蒼 (あお) き 光る月

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

偽りの 心射貫いて 凍る月

 (楽天女 様 / 埼玉県)

追いかけて 追いかけて月の 虜になる

 (やっこ 様 / 富山県)

満月を 浮かべて白き 露天の湯

 (平野 露璃 様 / 北海道)

手のひらで 海なでわたる 朧月

 (平野 露璃 様 / 北海道)

マネキンの 気取ったポーズ 春の月

 (平野 露璃 様 / 北海道)

泣かないでと 月の光が 頬に触れる

 (やっこ 様 / 富山県)

秋月に バイバイをする もみじの手

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

おめでとうと 新年の月に あいさつする

 (やっこ 様 / 富山県)

よろしくと 新年の月に つぶやく

 (やっこ 様 / 富山県)

教会の 賛美歌 (うた) に寄り添う 師走月

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

留学の 初夜に優しき 春の月

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

お月さん 君のこと大 大大好き

 (やっこ 様 / 富山県)

雪だるま 月の灯りが 守る宿

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

春の月 透かしたもうや 新世紀

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

夏祭り 終わり余韻に 涼む月

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

吐く息に 白くにじむ 君と月かな

 (yumiさん 様 / 埼玉県)

珈琲を 飲み暖とれり 月の下

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

受験生 合格印を 見し月に

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

千年後 月と地球は 双子星

 (小桜甦 月 様 / 岡山県)

冬の月 白い吐息で 朧月

 (小桜甦 月 様 / 岡山県)

静雪夜 (せいせつや)  心フルエル 月氷ル

 (小桜甦 月 様 / 岡山県)

かざした手 こぼれ落ちる 月雫

 (小桜甦 月 様 / 岡山県)

悔しさに かすむ彼方に 光ル月

 (小桜甦 月 様 / 岡山県)

夜空に ロマンを彩る 月一つ

 (やっこ 様 / 富山県)

十五夜に 歌う雅びの しもべかも

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

十五夜に ゆく歳月 (さいげつ) を 愛 (め) で浮かし

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

キミとボク つなぐ月夜に 愛しさを

 (momo 様 / 新潟県)

銀世界 橡の上に 沈む月

 (新築 様 / 島根県)

寒の月 いのち透明に 友逝けり

 (広明晨禾 様 / 富山県)

満月に 「希望」という名の 星をみる

 (望月 園子 様 / 東京都)

十五夜の 夜 (よ) ふけて鳴くは 我ひとり

 (阿左見 力 様 / 群馬県)

寒寒 (さむざむ) と 昔を偲ぶ 涙月 (なみだずき)

 (阿左見 力 様 / 群馬県)

月宿る 水面 (みなも) に踊る 子ノ記憶

 (小桜甦 月 様 / 岡山県)

宵闇 (よいやみ) に 冷たく燃える 赤嫦娥 (せきじょうが)

 (小桜甦 月 様 / 岡山県)

月を見て 愛 (いと) しき人を 今思う

 (はな 様 / 岡山県)

恋心 月の満ち欠け タイミング

 (ごう 様 / 三重県)

昇る陽 (ひ) と 沈む月あり 冬の朝

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

月ひとつ 霜降る町を 見しけふも

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

秋月に 馳 (は) せるる我が 生まる空

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

満つ春の 月に繋がれ 子の未来

 (momo 様 / 新潟県)

手のひらに 月を浮かばせ あそびみる

 (羽田 康司 様 / 埼玉県)

月光 (げっこう) が 照らす夜道の 影法師

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

不登校 見上 (あ) ぐやけふも 秋の月

 (ミツキクン 様 / 宮城県)

新月に 重ねて想う 見えぬ明日

 (ANDY 様 / 愛知県)

空高く 「夢は月へ」と 想い馳せ

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

山歩き 夕闇追い越し 月あかり

 (もも 様 / 大阪府)

名月や 影絵の狐 耳長し

 (もも 様 / 大阪府)

名月や 紐の切れたる 古草履

 (もも 様 / 大阪府)

廃校の ジャングルジムに 月見客

 (もも 様 / 大阪府)

血洗ひ池に 映りて月の 鎌光る

 (もも 様 / 大阪府)

月灯 (あか) り 雪の道ゆく 人の影

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

故郷 (さと) 離る 春と夜汽車の 音と月

 (中村 恵美 様 / 埼玉県)

夕やみは 真昼の月に 色をのせつつ

 (宮腰 聖子 様 / 東京都)

月凍 (い) ても なお暖かし 母の写真 (かお)

 (にゅり 様 / 宮城県)

お月様! 叫ぶ子供の ほほに夕焼け

 (にゅり 様 / 宮城県)

朧月 君に振られてさらに 月朧

 (ゆう 様 / 茨城県)

きみとまた めぐり合いたい 梅雨の月

 (ゆう 様 / 茨城県)

宵闇に 君を重ねてみる このせつな

 (ゆう 様 / 茨城県)

名月に 今誓わん 九人目

 (ゆう 様 / 茨城県)

月末は フトコロ目指し 北風ヒュー

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

少年の 夢乗せ自転車 E.T.と

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)

体内に 月はたくさん されど見ぬ

 (ZEPHYR 様 / 岐阜県)