疑惑

宇宙飛行士が撮った写真は、全部影が真っ黒になっていない。物体の影が、時折非常にはっきりと見えることがある。着陸船の脇に取り付けられた銘板も簡単に読むことができる。もし、月面での光源が太陽だけで、しかも月面に空気がなくて光が散乱されることがなければ、影は完全に真っ黒になるはずなのに。


(クリックするとより大きな写真を表示できます サイズ: 250KB)

アポロ11号の着陸船から、はしごを伝って下りてくるエドウィン(バズ)・オルドリン宇宙飛行士。彼の位置は着陸船の影の部分のはずなのに、彼の姿ははっきりとみえている。
Photo by NASA, 写真番号 AS11-40-5869, 出典: The Project Apollo Archive (http://www.apolloarchive.com )

アポロ16号のミッションで、プラム・クレーターの脇に立つチャールズ・デューク宇宙飛行士。デューク飛行士は太陽を背に立っているにもかかわらず、彼の正面の姿は明るくはっきりとみることができる。
Photo by NASA, 写真番号 AS16-114-18423, 出典: GRIN (Great Images in NASA), http://grin.hq.nasa.gov/
上の写真は拡大してご覧頂けます。(…640×647ピクセル、483KB)(…1500×1517ピクセル、2.5MB)(…3000×3033ピクセル、8.7MB)

アポロ14号着陸船「アンタレス」。太陽を反射して、着陸船の上部に光の反射(フレア)がみえている。写真に向いている側は全体に太陽の影にあるが、写真中央の「UNITED STATES」というプレートははっきりとみえている。
Photo by NASA, 写真番号 AS14-66-9306, 出典: GRIN (Great Images in NASA),
http://grin.hq.nasa.gov/
上の写真は拡大してご覧頂けます。(…640×647ピクセル、442KB)(…1500×1517ピクセル、2.5MB)(…3000×3033ピクセル、8.7MB)


真実

彼らの主張そのものの中に答えがあります…「もし月面での光源が太陽だけで…」。それが間違っているんです!!。最初に思いついたのは、きっと地球が影を満たすくらい明るいので、影が真っ暗にみえないのだろうということだったのですが、しかし、結局それは間違っていると気付きました。なぜなら、地球は太陽に比べてほんのわずかの明るさしかなくて、影を明るくするためにはまったく足りません。では、他の光源として月面に何があったのでしょうか?

その答えは…月そのものです!! 月の砂にはちょっと変わった特徴があります。この月の砂は、光が入って来た方向に強く光を反射する傾向がある。つまり、もしあなたが月面に立っていたとして、月面を懐中電灯で照らしたとしたら、あなたが立っているところからは、その懐中電灯の光が当たったところに光のスポットが見えるはずです。しかし、あなたの側に突っ立っている同僚からは、その光のスポットはほとんど見えないという変わった現象が起こります。要は、壊中電灯からの光は、その光源に向かってのみ強く反射されるので、その光源以外の方向には、あまり光が反射されない、つまり、あなたの脇に立っている同僚には、その光のスポットがほとんど見えないのです。

それでは、次に月に存在する光源、つまり太陽光について考えてみましょう。まず、月面にある着陸船のイメージを想像してみてください。そして太陽光が、そのイメージの右側から入射していて、それゆえに着陸船の左側は影で真っ黒にみえるはずです。しかし、実際には太陽光は着陸船よりももっと左側の方にある月面に降り注ぎますので、その光は太陽の方向に向って強く反射されるはずです。そして、その反射された一部の光は、着陸船の影で隠された部分を照すのです。つまり、月面で反射された光が、影で真っ暗に見えるはずの部分を明るく照らすので、常に真っ暗に見えないということが起こります。

このような現象を、ドイツ語でハイリゲンシャイン(英語で「ヘイロー」(Halo)の意味)といいます。
ここから、その現象の一例を見ることができます(訳注: 上記リンクは英語で書かれたページへジャンプします)。 この現象こそが、「実際には宇宙飛行士は月面にいるのでなく、スポットライトに照らされたスタジオの中にいるのだ」という疑惑論を否定する証拠になります。つまり、影の部分が真っ暗に見えないのは、このハイリゲンシャインがもたらす自然現象なのです。この現象を、あなたご自身で再現する事ができます寒い朝、濡れた芝生の上という状況がいいでしょう。太陽に背を向けて立ってみて、あなたの頭の影をみてみましょう。周りにヘイロー(暈)が見えるはずです。この効果はまた、野球場の内野のように、非常に細かい砂が舞っているような場合にもはっきりと現れます。もちろん、月面でも。

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「月の雑学 第3話」は、いくつかのページを除き、Phil Plait氏によるサイト"Bad Astronomy"内にある、"Fox TV and the Apollo Moon Hoax"の内容をもとにしています。 「月の雑学 第3話」を作るにあたり、翻訳及び内容の使用を快諾していただいたPhil Plait氏、及びサイトの内容をご紹介いただいた、MITの石橋和紀さんに感謝いたします。
 なお、「月の雑学 第3話」の内容につきましては、Phil Plait氏は責任を持ちません。記述内容についてはあくまで、月探査情報ステーション主催者が責任を負うものとします。

 


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