疑惑

アポロ計画で撮影された2枚の写真がある。1枚は、山を背景にして、月着陸船が写っている。もう1枚には同じ山が写っているのに、こちらには着陸船が全然写っていない。もちろん、宇宙飛行士は着陸する前には両方の写真を撮れないはずだし、月着陸船が離陸してしまったら、着陸船の下部は残るはずである。だから、2枚目の写真にはともかく何かがあるべきであって、何もないということはあり得ない。明らかに、この山の背景は嘘のセット撮影用で、別の写真を撮ったときにNASAが再利用したのだ。


アポロ15号着陸船と背景の山。南東方向をみて撮影した写真。
Photo by NASA, 写真番号 AS15-82-11057
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アポロ15号着陸地点の近くの、小石で埋め尽くされたクレーター。
Photo by NASA, 写真番号 AS15-82-11082,
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2枚の写真の出典は、共にJSC Digital Image Collection, http://images.jsc.nasa.gov


真実

もちろん確かに、両方の写真とも本物です。何度も繰り返しになりますが、月は地球とは違います。地球では、遠くにあるものは空気中のちりなどにより、ぼやけてみえます。このぼやけ具合を利用して、私たちは感覚的に遠くの物体の距離を判断します。しかし、空気がない月面では、その物体がすごく遠くにあっても、私たちの眼にははっきり、鮮明にみえます。おそらく、ある石が見えたとして、大きさ1mの石が100m離れたところにあるのか、あるいは大きさ100mの石が10km離れたところにあるのかは、わからないでしょう。
ここで起きているのがまさにこのことなのです。最初の写真では、着陸船のすぐ近くに宇宙飛行士がいます。おそらくは20mか30mくらいしか離れていません。背景の山は数km彼方にあります。2枚目の写真では、宇宙飛行士は脇に数百mだけ移動しています。そのため、着陸船は写真の構図からは外れています。しかし、山は全然動いていません。風景を注意深く眺めてみると、手前にある岩やクレーターなどはこの2枚の写真で違っていることが分かります。これは、まさに宇宙飛行士が脇へ動いたと考えれば良いことです。つまり、これはいかさまなどではなく、視差(下の訳注参照)の問題です。

もう1つ、月面で距離を測ることが難しい理由は、月面の岩の形が原因です。腰掛けられるくらい小さいと思った岩でも、家よりも大きい岩とほとんど同じようにみえるのです。人間は、ものの大きさを、相対的な大きさでも判断します。私たちは人間の大きさ、あるいは木の高さを知っていますので、物体のみかけの大きさを使って、距離を判断することができます。もしその物体がどのくらい大きいのかを知らなければ、距離の判断を誤ってしまうことになります。

この良い例として、アポロ16号の探査で撮影されたビデオがあります。背後には、高さ3〜4mくらいにみえる岩があります。ビデオ映像の4分の3くらいのところで、宇宙飛行士がこの岩に向かって歩いていきます。何と、この岩は大きい家ほどのサイズもあるのです!! 岩を最初に見たときに、それがどのくらいの大きさだか知らないと、距離を知る手掛かりは全くないのです。この岩の大きさを直接測定する手段を得て初めて、この岩が中くらいのサイズであるということが分かったわけです。このケースの場合には、岩の隣に背の低い宇宙飛行士が立っているので分かります。

(訳注)視差とは、見る場所の違いによって、物の位置が違ってみえる現象のことを言います。右目と左目は離れていますから、片方の目を閉じれば、ものの位置が違ってみえます。指を顔のすぐ近くに立てて、右目と左目で眺めてみましょう。すぐ近くだと、片方の目でみたときに位置が違ってみえますが、指を遠くに持って行くと、あまり位置の違いがわからなくなってきます。
電車に乗っているときに、近くにみえる建物は次々に目の前を通り過ぎていきますが、遠くの建物や山並みは、ゆっくりと動いている、あるいはほとんど動いていないという経験は、みなさんがお持ちだと思います。このような現象が、視差の影響によるものなのです。

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「月の雑学 第3話」は、いくつかのページを除き、Phil Plait氏によるサイト"Bad Astronomy"内にある、"Fox TV and the Apollo Moon Hoax"の内容をもとにしています。 「月の雑学 第3話」を作るにあたり、翻訳及び内容の使用を快諾していただいたPhil Plait氏、及びサイトの内容をご紹介いただいた、MITの石橋和紀さんに感謝いたします。
 なお、「月の雑学 第3話」の内容につきましては、Phil Plait氏は責任を持ちません。記述内容についてはあくまで、月探査情報ステーション主催者が責任を負うものとします。

 


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