三浦保範
山口大学.理学部

月の科学の大切さ:

私たちの住んでいる惑星地球を良く知るようになったのは、二十世紀最大のイベントといわれる月面アポロ探査を契機にしています。
その理由は、科学技術を総結集して地球以外の天体岩石鉱物物質を回収して月面の石の起源を知ろうとしたからです。
その結果、分析技術が発達して出来た年代や微量元素が分かりました。
また、月面に設置した地震計から月内部の震源地を推定できる方法を応用して、それまで地球表層だけの情報が地球内部の構造までが詳しく分かり始めました。
月という複雑な情報物体を解明するために用いられた方法は、多くの学問分野を結集した総合的な科学分野の確立をもたらしました。新しい研究分野も始まり、ゆっくりとした静的な反応考察から、瞬間的で動的な衝突の反応過程(衝撃変成作用)が議論でき始めました。
さらには、小宇宙といわれる複雑な情報体である私たち生命体の起源と絶滅進化も議論できるようになりました。
そのきっかけは1980年になって月面に衝突した小惑星起源隕石起源の白金属元素が、地球で過去5回の生命体の大量絶滅を記録している地質境界から発見されたことからです。
地球外物質の衝突によって、生命体の絶滅進化と地球環境変化に影響があることが分かってきました。
現在では次の6回目の生命絶滅がこれまでの小天体衝突によるのか、人類による環境汚染によるものなのか話題となり、地球レベルの環境対策が議論され始め新しい研究分野をつくり始めています。
このように複雑な情報系である太陽系天体物質(月、隕石、火星、地球など)と小宇宙といわれる生命体の解明が、科学の進歩で関係し始めてきました。
1999年は、この地球惑星物質と情報分野で30周年の記念すべき年です。1969年には、米国NASAのアポロ11号で初めて月面試料を持ち返り、メキシコに落下した有機物と水を大量に含むアレンデ炭素質隕石が大量に回収され、そして日本の南極観測隊による多数の南極隕石(Yamato-69)等を回収し、多様な研究が始まりました。また、離れた空間で迅速に連絡しあうために衛星情報を使った通信革命が、この月面テレビ中継を機に盛んになりました。
私は1986年に米国NASAの惑星物質化学部門の主任研究員(PI)に山口大学と文部省を通して申請認可されて以来13年間、月面と隕石試料を研究する機会を得ました。この度5名の米国NASAの主任研究者を招待して、30周年記念の年に宇宙・地球惑星環境国際シンポジウム(PIECE’99)とA・キャメロン教授(ハーバード・スミソニアン天文物理学センター)の「星間ガスから地球・月系まで」の公開講座を開催することができました。詳細は、私のホームページを開いて下さい。

月科学へ意見:

30年も経つと旧来の学問内容が突然バーストして今の最先端科学と総合科学にスタートしたのが1969年の月面アポロ探査を契機にしたことは、周知に認めることとなりました。その重要性を、当時まだ生まれていない現在の若者に分かりやすく知らせるのも、私たちの使命でもあります。当時情報は少なかったのですが、米国ではその月科学計画も突然でなく30年に及ぶ計画の集大成と位置づけており、現在も長期で研究教育を進めています。これからの日本も、時代に対応して宇宙大綱のような長期計画が必要になっています。

三浦保範
理学部地球科学教室
Tel: 083-933-5746; FAX:083-933-5746/5768
E-mail: yasmiura@po.cc.yamaguchi-u.ac.jp
URL: http://www.sv.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~dfb30/PIECE99/PIECE_j.html