ニューホライズンズが2019年1月1日に最接近する天体「ウルティマ・トゥーレ(Ultima Thule)」とは、カイパーベルト(注1)にある小さな天体です。

「ウルティマ・トゥーレ」に最接近するニューホライズンズ探査機の想像図

カイパーベルト天体「ウルティマ・トゥーレ」に最接近するニューホライズンズ探査機の想像図
(Photo: NASA/JHUAPL/SwRI)

■カイパーベルト天体とは
カイパーベルト天体とは、太陽系の外側、海王星よりも外側に存在するとされる領域「カイパーベルト」に属する天体です。
太陽系で最も遠くにある惑星、海王星の先にさらに惑星があるのか、という問いは、海王星が発見されてからも続いていました。さらに1930年に冥王星が発見されますが、冥王星は科学者が予測していた惑星(当時)よりは小さく、その謎を解明しようという努力が続けられてきました。
「第10惑星」「第11惑星」…といったさらなる惑星という考え方と共に、海王星より先の太陽系空間には、冥王星のような比較的小さな(といっても、大きさが数十〜数百キロメートルくらいの)天体が多数存在する領域があるのではないか、という考え方が提唱されました。最初にこの考え方を述べたのは科学者エッジワースで、1957年には太陽系科学に先駆的な役割を果たしたジェラルド・カイパーがこの考え方を述べます。このような「仮想的な」領域は、カイパーの名前をとって「カイパーベルト」と呼ばれるようになりました。

長い間、カイパーベルトは存在の可能性はあるものの直接の観測が難しいとされてきました。太陽系から遠く、それほど大きくない天体を観測するためには、非常に性能が高い望遠鏡が必要とされるからです。
1992年、ハワイ大学のジューウィットとカリフォルニア大学バークレー校のルー(いずれも当時)により、冥王星の先にある大きな天体「1992 QB1」が発見されます(注2)。その後、立て続けに似たような遠くて大きな天体が発見されます。これらの発見により、カイパーベルト領域に実際に天体が存在することが確かめられ、その後の冥王星の惑星からの分類変更につながっていきます。

現在カイパーベルト天体は20個以上見つかっており、そのいくつかは準惑星に属するのではないかと考えられています。実際、カイパーベルト天体である「マケマケ」「ハウメア」はすでに準惑星に分類されています。
そして、ニューホライズンズが史上はじめて、このカイパーベルト天体を直接探査することになります。

■ウルティマ・トゥーレとは

ウルティマ・トゥーレ (Ultima Thule)は、2014年に発見されたカイパーベルト天体です。
2014年6月26日、ニューホライズンズのチームがハッブル宇宙望遠鏡を使ってこの天体を発見しました。仮符号「2014 MU69」と名付けられたこの天体には、後に一般公募により、「私たちが知る世界を越えたところ」という意味の愛称「ウルティマ・トゥーレ」がつけられました。
ニューホライズンズのチームは、2015年後の冥王星への最接近(フライバイ)後に、カイパーベルト天体を探査することを計画していました。いくつかの候補天体の中から、ニューホライズンズの残りの燃料などで到達可能であることなどから、このウルティマ・トゥーレが目標として選ばれたのです。

ウルティマ・トゥーレは、カイパーベルトの中でも最も遠方に位置する天体とされ、地球からは65億キロも離れています。
ウルティマ・トゥーレの大きさはさしわたしがおよそ30キロほどと推定されており、これまでみつかってきたカイパーベルト天体の中では比較的小さな部類に属します。
2017年7月に行われた観測により、ウルティマ・トゥーレは極めて奇妙な形をしていることがわかりました。現在のところ、この天体は鉄アレイのような、2つの天体がくっついたような形、あるいは場合によっては2つの天体からなる「連星系」を成している可能性が考えられています。
また、ウルティマ・トゥーレの表面はかなり赤いこともわかってきています。

しかし、地上からの観測ではここまでが限界です。なにしろ、ウルティマ・トゥーレがいる位置では、太陽光の強さは地球のわずか0.05パーセントしかありません。つまり、これだけの光しか反射しないわけですから、地球からみても極めて暗い天体であり、その表面がどのようになっているのか、何でできているのか、といった詳しいことを知るすべはありません。

ニューホライズンズが史上はじめてカイパーベルト天体であるウルティマ・トゥーレを観測することにより、このように地球からでは暗くてよくわからない、そしてこれまで明らかではなかったカイパーベルト天体の真の姿を明らかにすることが期待されています。
カイパーベルト天体も、地球などの惑星と同じく、太陽系ができた46億年前にできたと考えられています。そのため、このような太陽系「最果て」の天体を調べることは、太陽系のでき方や私たちの地球をはじめとする惑星のでき方を知る上でも非常に重要なのです。


(注1)カイパーベルトは、正確には「エッジワース-カイパーベルト」と表記します。本記事では「カイパーベルト」と表記しています。
(注2)現在では、1992 QB1には「アルビオン」(Albion)という名前がつけられています。


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