最近月探査に意欲をみせているロシアですが、無人探査だけでなく、有人探査に向けても布石を打っているようです。このほど、ロシアのニュースサイト「スプートニク」の日本語版で、ロシアが2029年の有人月飛行を計画しているという記事が掲載されました。
これは、ロシアの宇宙企業「エネルギア」のウラジーミル・ソンツェフ社長が会見で述べたものです。それによれば、ロシアは現在、月への飛行が可能な新しい有人宇宙船の開発を実施しており、そのステップとして、
- 2021年…この新しい有人宇宙船の飛行を実施(編集長注: おそらく無人での試験飛行と思われます)
- 2023年…国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキング(編集長注: おそらく有人での試験飛行と思われます)
- 2025年…月への自立飛行と、有人飛行と関連した技術の向上(編集長注: この意味するところが記事からは不明ですが、おそらくは月への周回飛行を実施することで、月までの往復飛行に耐えられる性能を持っていることを実証するものと思われます。ただ、この飛行が有人で行われるのか無人で行われるのかは不明です)。
- 2029年〜2030年…月飛行用の「複合体」飛行実験の実施(編集長注: この「複合体」は、ロケットとの複合体を指すのか、着陸船などのモジュールとの複合体を指すのか、こちらもわかりません。おそらくは後者であると考えられます)。
- 2033年〜2034年…これまでいわれていた月への有人探査の時期。
以上から、ロシアは大体2030年ころまでには有人月探査を実施し、おそらくは月面基地の構築を開始するものと思われます。
これら宇宙船の開発タイミングと月着陸のタイミングは、アメリカの宇宙開発と絡めて考えると極めて絶妙です。アメリカが開発中の深宇宙有人宇宙船「オライオン」(オリオン)は、2020年に初飛行の予定です。ロシアの新宇宙船はこの予定とズバリかち合うことになります。
2023年は、このオライオン宇宙船を使って小惑星への有人探査を実施する予定ですが、ロシアはこの同じ年にISSへのドッキングを計画しています。
また、2030年代半ばにはオライオン宇宙船による有人火星探査が構想されていますが、ロシアはそれよりも月面をまずしっかりと拠点化する方向に向かうようです。
このように、いたずらにアメリカに対抗するのではなく、自身の宇宙開発力の回復なども見据えながら、現実的なラインを選択しているところに、ロシアの本気度が伺えるといえるでしょう。ただもちろん、これだけの構想を実現するためには、予算や技術力などの前提が必要です。現在のロシアにその前提が確保できているかどうかは不透明なだけに、引き続きロシアの宇宙計画、とりわけ月・惑星探査計画を注意深く見守っていく必要があるでしょう。
- スプートニク日本語版の記事
http://jp.sputniknews.com/russia/20151027/1083780.html