現在月探査を実施しているアメリカの探査機、ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)が、このほどアポロ時代に撮影された写真には写っていなかったクレーターを発見しました。
今回、写真の調査を行ったのは、上の四角で囲まれた領域です。クレーターの東端の部分ですが、このクレーターはフランツクレーターです。
さて、この領域について、アポロが撮影したデータとLROのデータを並べてみることにしましょう。
左側が、1971年8月にアポロ15号で撮影された写真。そして右側が、2009年9月にLROにより撮影された写真です。両者ともほぼ同じ太陽高度などの条件で撮影されており、今回そのように似た条件のものを選んで比較してみたのです。
その結果、写真中央やや下のところに、非常に鮮明で白いクレーターがあることがわかりました。通常、クレーターは飛散物などがあるため、できた当初は非常に白くみえるということになります。
明らかに写真を比較すれば、クレーターがこの38年間の間のどこかであたらしくできた、ということがわかると思います。
このクレーターの部分を拡大してみました(左下のスケールは100メートル)。クレーターの大きさは大体直径10メートルくらいと推測されます。非常に小さいクレーターではありますが、それでも明るいために鮮明に捉えられていることがわかります。
この場所は、アポロを含め、他の探査機の調査によっても(…と原文には書いてありますが、「かぐや」はどうなのでしょうか)クレーターは記述されておらず、また、アポロに関連したロケット部材などが落下したという情報もありません。従って、この38年間のどこかで、自然物体が落下してクレーターが生成されたと考えるのがいちばん自然です。なお、研究者は、このようなクレーターを作ったのは、直径が50センチメートル程度の大きさの隕石ではないかと推測しています。
このような超小型のクレーターを発見することは、現在、月面にどのくらいの割合で隕石などが落下してきているのかを知る貴重な手がかりになります。今後、LROが搭載する超高解像度のカメラが、他の地点でも同様の発見を行うことも期待してよいでしょう。
写真はLROについては Photo by NASA/GSFC/ASU、アポロの写真はPhoto by NASA。
・New Impact Crater on the Moon! (LROカメラチーム)
http://lroc.sese.asu.edu/news/index.php?/archives/260-New-Impact-Crater-on-the-Moon!.html
・ルナー・リコネサンス・オービター/エルクロス (月探査情報ステーション)
https://moonstation.jp/ja/history/LRO/