アメリカが打ち上げた月探査機、ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)は、最高で解像度50センチという非常に高性能のカメラを搭載しています。これだけのカメラがあれば、月面のいろいろなものが見えるわけですが、多くの人が見たいのは、アポロ計画の痕跡でしょう。例えば、アポロ計画で月面に設置された着陸船の残骸や科学機器、さらには旗などがみえるかどうか、というのは、誰しもが抱く疑問、というか期待ではないかと思います。
このうち、アポロ着陸船の下部や科学機器、さらにはローバーなどについては、すでに撮影に成功していますが、ついに「旗」の撮影にも成功しました。そう、アポロ計画で月面に設置された「星条旗」(アメリカ国旗)です。

アポロ17号着陸地点の星条旗

アポロ17号着陸地点の星条旗

こちらの写真は、アポロ17号の着陸点付近を、LROカメラの狭角カメラで撮影したものです。写真の中央やや左上のところに、「Flag and shadow」とある小さな黒い点が、この旗と、その旗が月面に落とす影です。
左下にはこの部分の拡大図が写っています。拡大図では、下の方に着陸船の下部が、上の方に数ピクセルながらも旗、そして旗の影が写っているのがわかります。旗自体を識別することはなかなかできにくいのですが、位置などからみてここに旗があるのは間違いありません。

アポロ16号着陸地点の星条旗

アポロ16号着陸地点の星条旗

こちらはアポロ16号着陸点の画像です。右下に着陸点付近の拡大図があります。こちらにも旗とその影が写っています。ちょっとわかりにくいですが、旗そのものもしっかりと写っていますし、その旗が月面に投げかける影も捉えられています。
なお、LROカメラでは、アポロ11号着陸点以外のすべての場所で、星条旗が立っていることを確認したとのことです。11号だけ見つからないのには立派な理由があります。これは、アポロ11号の宇宙飛行士の1人で、月面を歩いた人でもあるバズ・オルドリン氏が述べたことですが、11号の着陸船が月から離陸した際、そのエンジンの噴射で旗が倒れて(飛ばされて?)しまったということのようです。これでは、立っている旗を発見できるわけがありません。
今度アポロ11号の旗が見つかるとき、それはおそらく、この着陸点に人類が戻ったときになるのでしょう。
写真のクレジット
Photo: NASA/GSFC/ASU