ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)が撮影したアポロ12号着陸点の写真が公開されました。以前にもアポロ12号着陸点の写真は公開されていましたが、当時はまだLROは観測軌道にいなかったため、高度が高く、従って本来の解像度は出せていませんでした。今回は本来の解像度で撮影を行っています。

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上の写真は説明を付記していないもの、下の写真は説明を加えたものです。説明を加えていないものでも、何かがあるということははっきりとわかります。今回太陽高度が高かったため、影はほとんどみられません。
月面における反射率(アルベド)の変化は、その物質が何でできているか(海の物質か高地の物質か)と、宇宙風化度(maturity。宇宙放射線などの影響により、表層の物質が徐々に変質する現象)に影響されます。特に宇宙風化によって、表層の物質は徐々にではありますが、黒くなっていきます。
このアポロ12号着陸点は海のど真ん中で高地の物質はありません。従って、わずかな反射率(アルベド)の変化はほとんどが宇宙風化の度合いを表していると考えられます。
ところがたいへん不思議なことに、もっとも反射率が高い、つまり新鮮な物質が露出していると思われる着陸船の周りが、もっとも反射率が低い(黒い)ことがわかります。これは、宇宙飛行士たちが歩き回ったことによって、砂が踏み固められたためではないかと考えられます。
上の写真で、真ん中が着陸船「イントレピッド」(Intrepid)の底部です。そこから左上にある「へ」の字の物体が、アポロ月面科学観測パッケージ(ALSEP)です。またその反対側にあるのが、アポロより前に着陸していた科学探査機、サーベイヤー3号です。アポロ12号では、宇宙飛行士がサーベイヤー3号からテレビカメラなどを取り外して地球へ持ち帰っています。また、その際に地球の細菌が生き残っているのが発見されたことでも有名です。

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さらに着陸船の周りを拡大したのが上の写真です。ALSEPの1つ1つの装置がよりはっきりとみえます。
SIDE/CCGは、月面の希薄な大気や放射線などを観測するためのパッケージ(Suprathermal Ion Detector Experiment / Cold Cathode Gauge)で、その右手にあるのが原子力電池(RTG: Radioisotope Thermoelectric Generator)、真ん中が装置の中央部(Central Statoin)、その右側に地震計(Seismometer)、磁力計(Magnetometer)があります。
・アポロ12号着陸点についてのNASAの記事 (英語)
  http://www.nasa.gov/mission_pages/LRO/multimedia/lroimages/lroc_20091104_apollo12.html
・ルナー・リコネサンス・オービター/エルクロス (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/history/LRO/